シク建築
ハリマンディル・サーヒブ
インド・アムリトサルにあるシク教の総本山。聖池の中央に建つ拝殿は、大理石の下…
シク建築は、16世紀末以降にインド北西部のパンジャーブ地方で発達した建築様式である。シク教の礼拝施設グルドワーラーを中心に展開し、在来のインド建築の伝統に、同時代のムガル建築とラージプート建築の要素を取り込んで独自の表現を築いた。最も顕著な特徴は、蓮の蕾を思わせる膨らみをもつ縞状のドームであり、多くは中央の大ドームと四隅の小塔(チャトリ)を組み合わせる。軒には深い庇(チャッジャー)を回し、壁面には金箔・大理石象嵌・花文や幾何学文のフレスコ・鏡や色ガラス・金属打ち出しがふんだんに用いられる。ムガル建築譲りの多弁アーチや張り出しバルコニー(ジャローカー)も好まれた。平面は左右対称を基本としつつ、聖池(サロヴァル)の水面に建物を映す構成や、四方に開かれた入口によって万人への開放性を象徴させる点に、身分やカーストを問わないシク教の平等思想が反映されている。様式が最も華やかに結晶したのは、19世紀初頭のマハラージャ・ランジート・シングによるアムリトサルの黄金寺院の改築で、大理石の下層に金で覆われた上層を載せる姿は、以後のシク建築の規範となった。この語彙はパンジャーブ各地のグルドワーラーへ、さらに近代以降は移民とともに世界各地のシク寺院へと広がっている。母体としたムガル建築の形式を借りながらも、装飾の密度と水を伴う象徴性においてそれを転じ、宗教共同体の理念を可視化した点に、この様式の独自性がある。
インド・アムリトサルにあるシク教の総本山。聖池の中央に建つ拝殿は、大理石の下…