日本建築
靖国神社
東京・九段坂上の神社。1869年に戊辰戦争の戦没者を祀る東京招魂社として創建され…
建築家 / Architect
伊藤平左衛門(9世、1829–1913)は、明治期を代表する宮大工の棟梁であり、建築家である。伊藤平左衛門は、江戸時代に尾張藩の作事方を務めた大工の家が代々継いだ名跡で、9世は8世の子として生まれた。名古屋を拠点とする家業を継ぎ、明治維新後は東京・京都をはじめ全国の大規模な社寺の造営を請け負った。
東京では、1869年に九段坂上に創建された東京招魂社(1879年に靖国神社と改称)の社殿を担い、1872年に神明造の本殿を、1901年に唐破風の向拝を備えた入母屋造の拝殿を完成させた。京都では、幕末の兵火で焼けた東本願寺の再建に棟梁の一人として加わり、1895年に完成した御影堂と阿弥陀堂は、いずれも重要文化財に指定されている。御影堂は国内最大級の木造宗教建築として知られる。このほか、札幌・岐阜・鹿児島などにある本願寺別院の本堂も手がけた。設計を手がけ、没後の1915年に完成した真宗大谷派函館別院本堂は、伝統的な寺院の形を鉄筋コンクリート造で実現した早い例である。
伝統工法の棟梁でありながら、明治初期には洋風の公共建築にも携わり、旧見付学校(1875年)や旧三重県庁舎(1879年)の工事に関わった。江戸以来の木造技術を、近代国家の新しい祭祀施設や巨大な宗教建築に適用した点に、その仕事の特色がある。帝室技芸員に任じられ、藍綬褒章を受けた。