フロドナ建築派
カロジャ教会
ベラルーシ西部フロドナ、ネマン川を望む高台に建つ12世紀の正教会堂。色石と壺を…
フロドナ建築派(グロドナ建築派)は、12世紀後半から13世紀初頭にかけて、現在のベラルーシ西部、ネマン川中流域のフロドナ(ロシア語名グロドノ)を中心に展開した建築の流れである。中世にこの地に栄えた黒ルーシ(チョルナヤ・ルーシ)の文化圏に属し、キエフ・ルーシの石造建築を母体としながら、地方で独自の意匠を発達させた点に特色がある。平面は六本ないし四本の円柱が支える十字型のクロスドーム式を基本とし、外壁は丸みを帯びた付柱(ピラスター)で柔らかく分節される。レンガを主体とした組積に、控えめながら個性的な装飾が加わる。最も際立つのは壁面の意匠である。青・緑・赤に発色する研磨した多色の石を壁に埋め込み、十字などの図像を描き出す。さらに壁面には無数の素焼きの壺が口を外に向けて塗り込められた。これらの壺は通常、正教会堂で音響を整える共鳴器として用いられるが、この派では装飾としての効果が重んじられ、結果として壁面は壁画ではなく、素材そのものの色と質感によって構成された。内部には西側の壁から登る狭い階段や、目的の判然としない側室の階段など、独自の工夫も見られる。代表例はフロドナのカロジャ教会(聖ボリス・グレプ教会)であり、フロドナやヴァウカヴィスクには同系統の教会堂の遺構が点在する。いずれも12世紀から13世紀の境に位置づけられ、修復の際にはアプスから当時のフレスコの断片が見いだされている。モンゴルの侵攻と政治的変動のなかで比較的短命に終わった地方様式だが、画一的でないルーシ建築の地域的な広がりを今日に伝える、貴重な系譜である。