アール・ヌーヴォー
アール・ヌーヴォー(Art Nouveau、「新しい芸術」の意)は、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパ各地で展開した装飾芸術・建築の様式である。産業化と歴史主義的な様式の反復に対する反動として生まれ、過去の様式の引用を退け、自然の植物や曲線から引いた有機的なモチーフによって、建築・家具・工芸・グラフィックを一貫した総合芸術として構想した点に特徴がある。
形態の上では、蔓草のように伸びる流動的な曲線(しばしば鞭のしなりにたとえられる)、鉄やガラスといった新素材を装飾として露出させる手法、左右非対称の構成、植物・昆虫・女性像をかたどった造形などが好まれた。鉄の可塑性を装飾へと転じたヴィクトル・オルタの邸宅建築や、地下鉄入口を手がけたエクトール・ギマールの作例は、その代表として知られる。
この様式は各地で固有の呼称をもって展開した。ドイツ語圏とその影響下にある北欧では「ユーゲントシュティール(ユーゲント)」、オーストリアでは「ゼツェッシオン」、スペイン・カタルーニャでは「モデルニスモ」、イタリアでは「リバティ」と呼ばれ、それぞれの地域の伝統と結びついて多様な相貌を見せた。
歴史主義への反逆として出発しながら、過剰な装飾はやがて批判の対象となり、装飾そのものを排する次代のモダニズムへの道を準備した。短命ではあったが、建築を自律した造形表現として捉え直す転換点を画した様式である。