スウェーデン北部ウメオに建つ邸宅。後にストックホルム市庁舎を手がけるラグナル・エストベリの初期作で、1904年から1905年にかけて実業家ウナンデル=シャリン家のために建てられた。
§1 — 概要概要
シャリンスカ・ヴィラ(Scharinska villan)は、スウェーデン北部の都市ウメオ、デーベルン公園に隣接して建つ邸宅である。後にストックホルム市庁舎の設計者として知られることになる建築家ラグナル・エストベリの若き日の代表作であり、20世紀初頭の北欧における富裕市民の邸宅建築を伝える一例として、現在は国の文化財に指定されている。
歴史
施主は、木材・石炭・塩などを扱う商社シャリンス・セーネルを率いた実業家エギル・ウナンデル=シャリンである。彼は新邸の設計にあたって複数の建築家に当たったのち、当時ウメオで仕事をしていたエストベリに依頼した。建設は1904年に始まり、翌1905年に完成した。一家の住居であると同時に会社の事務所・接客の場をも兼ね、内部にはスペインを思わせるモザイクで飾られた食堂「スペインの間」が設けられた。1959年に一家はこの建物をウメオ市へ売却し、以後は学生団体などの活動の場として使われてきた。
建築的特徴
淡い薔薇色の漆喰で覆われた外観は、左右で高さの異なる二つの部分に分かれ、非対称の構成をとる。各窓軸の上にはバロックを思わせる曲線のペディメントが置かれ、地階には半円アーチの大窓が並ぶ。錬鉄製の小バルコニーや、七人の子どもと鸛をかたどった玄関扉の浮彫りなど、細部には手仕事の妙が凝らされている。様式の上では、英国風の折衷とバロックの引用、ユーゲント(アール・ヌーヴォー)の装飾が共存し、やがて国民ロマン主義を大成するエストベリが、土着の素材と造形を掘り下げていく前段階の姿をここに見ることができる。
意義・現在
シャリンスカ・ヴィラは、エストベリが大成する以前の、なお折衷的で実験的な作風を示す貴重な作例である。世紀転換期のスウェーデンにおいて、地方都市の実業家がいかに自らの地位と国際的な経験を建築に託したかを物語る点でも興味深い。1981年にはスウェーデンの建造物記念物(byggnadsminne)として、同国で最も強い法的保護のもとに置かれ、市の所有のもとで保存・活用が続けられている。