エッフェル塔 Eiffel Tower
エッフェル塔(tour Eiffel)は、パリ七区のシャン・ド・マルスに立つ高さ約330メートルの鉄塔である。1889年の万国博覧会のために技師ケクランとヌーギエが構想し、エッフェルの会社が建てた、近代の鉄構造を象徴する建築である。
§1 — 概要概要
エッフェル塔(tour Eiffel)は、パリ七区のシャン・ド・マルスに立つ鉄製の塔である。1889年のパリ万国博覧会の目玉として、橋梁技術を転用した鉄の骨組みだけで前例のない高さを実現した。完成時の高さは約300メートル、現在は頂部のアンテナを含めて約330メートルに達する。石と煉瓦が高層化の限界に突き当たっていた時代に、鉄構造の可能性を一挙に示した点で、近代建築史の転換点に位置づけられる。
歴史
塔の構想は、ギュスターヴ・エッフェル(Gustave Eiffel)の会社で働く二人の技師、モーリス・ケクラン(Maurice Koechlin)とエミール・ヌーギエ(Émile Nouguier)に始まる。1884年、二人は四本の格子状の脚が頂部で集まる高塔を考案した。当初エッフェル自身は乗り気でなかったが、社の建築家ステファン・ソーヴェストル(Stéphen Sauvestre)が脚部を結ぶ半円アーチやガラス張りの広間を加えて意匠を整えると、計画は現実味を帯びた。エッフェルは特許を買い取って事業の全責任を負い、万博の中心施設を募る競技設計に応募する。107案のなかから選ばれたのが、この計画であった。
建設は1887年に始まり、約二年二か月を経て1889年に完成した。およそ250人の作業員が、工場で精密に加工された約18,000個の錬鉄部材を現場で組み上げた。塔は当初、万博の二十年後にあたる1909年に解体される条件で許可されていた。これを救ったのは無線通信である。軍事用の電波塔として有用であることが認められ、解体を免れた。塔はその後もラジオ・テレビの送信塔として使われ続けている。
建築的特徴
エッフェル塔は、装飾を施した「建物」ではなく、力の流れをそのまま形にした構造物である。風圧に耐えるため、四本の脚は下に向かって大きく開き、上にいくほど細る曲線を描く。この輪郭は、エッフェルが橋梁で培った鉄の構造計算から導かれた合理的な形であり、見た目の優美さは構造そのものから生まれている。露出した格子(トラス)が全体を覆い、内部空間を囲い込まないため、塔は重さを感じさせない。ソーヴェストルが加えた基部のアーチは、技術一辺倒の塔に建築としての顔を与えた要素として残った。
意義・現在
完成当初、塔は多くの芸術家や文化人から「醜い鉄の塊」として激しい非難を浴びた。しかし鉄とガラスがひらく時代の象徴として受け入れられ、1930年にニューヨークのクライスラー・ビル(Chrysler Building)に抜かれるまで、四十年あまり世界一高い建造物であり続けた。今日では年間数百万人が訪れるパリ最大の名所であり、近代以降の高層建築が前提とする「鉄骨で高く積む」という発想の出発点として、建築史に確固たる位置を占めている。