ブルックリン橋 Brooklyn Bridge
ニューヨークのイースト川に架かり、マンハッタンとブルックリンを結ぶ吊橋。ジョン・ローブリングが設計し、1883年に開通した、当時世界最長の支間をもつ鋼線ケーブルの大吊橋である。尖頭アーチの石造主塔をもち、19世紀アメリカの土木技術を象徴する。
§1 — 概要概要
ブルックリン橋は、ニューヨーク市のイースト川に架かり、マンハッタンとブルックリンを結ぶ吊橋である。1883年に開通し、当時としては世界最長となる約486メートルの支間をもった。鋼線のケーブルで橋桁を吊り、尖頭アーチを刻んだ石造の二本の主塔が特徴で、19世紀アメリカの土木技術を象徴する名橋として知られる。
歴史
橋を設計したのは、ドイツ生まれの土木技師ジョン・オーガスタス・ローブリングである。ワイヤーロープ製法を確立し、各地で吊橋を手がけてきた彼にとって、イースト川を渡るこの橋は集大成となるはずであった。しかし1869年、現地測量中に渡し船に足を挟まれて負傷し、破傷風のため、着工を見ることなく世を去った。
跡を継いで技師長となったのは、息子のワシントン・ローブリングである。建設は1870年、川底に基礎を築くためのケーソンの沈設から始まった。だが彼もまた、圧縮空気のなかでの作業がもとで潜函病に倒れ、半身不随となって現場に立てなくなる。ここで橋の完成を支えたのが、妻のエミリー・ウォーレン・ローブリングであった。彼女は数学や材料力学、ケーブルの構造を自ら学び、病床の夫と現場の技師たちをつなぎ、技師長の職務の多くを11年にわたって代行した。1883年5月24日、橋は開通し、エミリーが最初に渡った。
建築的特徴
ブルックリン橋は、吊橋の主ケーブルに加えて、主塔から橋桁へ放射状に張られた斜めのステー(斜張)を併用する構造をとる。この二重の仕組みが橋に高い剛性を与え、扇状に広がるケーブルの網は、この橋ならではの美しい眺めをつくっている。鋼線をケーブルに用いた最初期の大橋でもあり、当初は錬鉄で構想された吊り構造を鋼に替えることで、自重を抑えて支間を伸ばした。石灰岩と花崗岩で築かれた高さ約84メートルの主塔は、二つの尖頭アーチを開き、ゴシック・リヴァイヴァルの趣をたたえる。橋上には車道の上に歩行者用の遊歩道が設けられ、設計者ローブリングはその価値をあらかじめ見抜いていた。
意義・現在
ブルックリン橋は、開通から140年余りを経た今もイースト川に架かり続け、自由の女神とならぶニューヨークの象徴となっている。その雄大な姿は詩や絵画、写真に繰り返し描かれ、アメリカの進取の精神を体現する記念碑とみなされてきた。橋を築いた三人のローブリングの名は橋に刻まれ、なかでも困難のなかで完成を導いたエミリーの功績は、近年あらためて高く評価されている。1964年にはアメリカ合衆国の国定歴史建造物に指定された。
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