ノイシュヴァンシュタイン城 Neuschwanstein Castle
バイエルンのアルプスを望む丘に立つ、19世紀の城。バイエルン王ルートヴィヒ2世が、中世への憧れとワーグナーへの傾倒から、隠れ家として築かせた。ロマネスク・リヴァイヴァルの「おとぎの城」として名高く、未完のまま王は世を去った。2025年に世界遺産に登録された。
§1 — 概要概要
ノイシュヴァンシュタイン城(Schloss Neuschwanstein)は、ドイツ南部バイエルン州のアルプスのふもと、シュヴァンガウの丘に立つ城である。19世紀後半、バイエルン王ルートヴィヒ2世が、隠れ家として、また敬愛する作曲家リヒャルト・ワーグナーへの捧げものとして築かせた。中世の城を理想化したロマネスク・リヴァイヴァルの建築で、「おとぎの城」として世界に知られ、ディズニーの城のモデルにもなった。
歴史
政治の重圧から逃れ、中世の世界に憧れたルートヴィヒ2世は、舞台美術家クリスチャン・ヤンクに夢のような城の構想画を描かせ、それを建築家エドゥアルト・リーデルが図面へと起こした。1869年9月、二つの中世の古城の跡地に礎石が据えられ、工事が始まった。リーデルののち、棟梁はゲオルク・フォン・ドルマン、ユリウス・ホフマンへと引き継がれていった。
王は細部にいたるまで自ら指示を与え、城は建築家のものというより、王自身の作品ともいうべきものとなった。しかし造営は莫大な負債を生み、1886年、王は廃位を宣告された直後に湖で謎の死を遂げる。城は未完のまま遺された。計画された二百以上の部屋のうち、完成したのはわずかであり、天守や礼拝堂はついに築かれなかった。王の死のわずか数週間後、城は負債の返済のため一般に公開され、以後、世界で最も多くの人が訪れる城の一つとなっている。
建築的特徴
城は、中世の城を模してはいるが、防御のための要塞ではなく、見せるための宮殿である。煉瓦の躯体を白い石灰岩で覆い、塔と小塔、尖塔がそびえる。様式はロマネスク・リヴァイヴァルを基調としつつ、ゴシックやビザンティンの要素も取り入れられた。なかでも玉座の間は、ビザンティンの聖堂を思わせる豪奢な空間である。内部はワーグナーの楽劇や、北欧・ゲルマンの伝説を主題とする壁画で飾られた。その一方で、当時の最新技術であった水道や暖房、電話なども備えられていた。
意義・現在
ノイシュヴァンシュタイン城は、ある王の夢が石の姿をとった、歴史主義建築のもっとも名高い一例である。建てられた当時は時代錯誤と嘲られもしたが、今日では19世紀ヨーロッパの歴史主義の代表作として評価されている。2025年、ほかのルートヴィヒ2世の宮殿群とともに、ユネスコ世界遺産に登録された。アルプスを背に立つその姿は、年に百万を超える人を惹きつけている。