シャッヘンの王の家 King's House on Schachen
ドイツ、バイエルン・アルプスの標高1866メートルに建つ、ルートヴィヒ2世の小さな山荘。外観は素朴な木造のスイス風シャレーだが、2階の全体を、東方趣味の壮麗な「トルコ広間」が占める。1872年に完成。徒歩でしか行けない、王の隠れ家であった。
§1 — 概要概要
ドイツ、バイエルン・アルプスのシャッヘンに建つ、バイエルン王ルートヴィヒ2世の小さな山荘である。標高1866メートル、ヴェッターシュタイン山群を望む高みに立つ。外観は素朴な木造のスイス風シャレーだが、内部の2階全体を、東方趣味の壮麗な「トルコ広間」が占める。その落差が、この建物の最大の見どころである。建築家ゲオルク・フォン・ドルマンの設計により、1872年に完成した。
歴史
ルートヴィヒ2世は1869年、山中に隠れ家を建てることを思い立ち、眺めの良いシャッヘンの地を選んだ。1872年にかけて、宮廷建築家ドルマンが建物を仕上げた。狩猟小屋と呼ばれることもあるが、王は狩りを好まず、ここを山の景色と孤独を味わう私的な隠れ家とした。
王は毎年8月25日、自らの誕生日と記名祝日をここで祝った。トルコ広間では、東方の衣装をまとった従者たちに水煙草を吸わせ、茶をふるまわせたという。19世紀の「活人画」の趣向であった。ノイシュヴァンシュタインなどに比べ、ルートヴィヒの城館のなかで最も知られていない一棟である。2025年、ノイシュヴァンシュタインらとともに「ルートヴィヒ2世の宮殿群」として世界遺産に登録された。
建築的特徴
建物は木造の二階建てで、鎧戸とバルコニーをもつ素朴な山小屋の姿をとる。1階には、松材で仕上げた質素な居室が五つ並ぶ。これと対照をなすのが、上階を丸ごと占める「トルコ広間」である。イスタンブールのエユップ宮殿の広間を範とし、版画をもとに設計された。中央には噴水、まわりには長椅子が置かれ、金・赤・青の色彩と装飾が、山上に東方の幻想を立ち上げる。
意義・現在
シャッヘンの王の家は、アルプスの高みに東方の夢を持ち込んだ、ルートヴィヒ2世の幻想の最も純粋な現れである。質素な外観の奥に別世界をしのばせるその構えは、現実から逃れて夢のなかに生きようとした王の心性を、そのまま映している。今はバイエルン州が管理し、徒歩でのみ訪れることのできる、山上の小さな宮殿として公開されている。
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