折衷主義建築
eclectic architecture年代
1820 — 1910
地域
欧米を中心に各地
時代
新古典・歴史主義
折衷主義建築(eclectic architecture)は、19世紀を中心に、過去のさまざまな歴史的様式の要素を一つの建物のなかに自由に組み合わせた建築のあり方である。一つの様式に忠実に従うのではなく、用途や象徴性、好みに応じて、ゴシック、古典(ルネサンス・バロック)、ビザンティン、ロマネスク、さらにはイスラームやエジプトといった東方の様式までを選び取り、混ぜ合わせた。
背景には、19世紀に発達した美術史・考古学の知識と、図版集や旅行を通じて過去の建築が広く参照できるようになった事情がある。「どの様式で建てるか」を設計者が選べるようになった時代の産物であり、同じく過去を範とする歴史主義(リヴァイヴァル)と地続きの関係にある。ただし、単一の様式を再生させるゴシック・リヴァイヴァル等と異なり、折衷主義は複数の様式を意図的に併存・混成させる点に特徴がある。
折衷主義は、劇場や歌劇場、博物館、銀行、万国博覧会の展示館、豪華ホテルなど、新しい時代の記念碑的な公共建築で力を発揮した。パリのオペラ座(シャルル・ガルニエ)はその代表例として名高い。また、固有の様式をもたない近代のシナゴーグの多くも、しばしばムーア様式やアッシリア・バビロニア風の意匠を取り込んだ折衷主義でまとめられた。ローマ大シナゴーグはその好例である。
20世紀に入り、装飾を排して機能を重んじるモダニズムが台頭すると、過去の様式を引用する折衷主義は批判の対象となり、次第に退いていった。
§1
代表建築
Buildings§2