セルビア国立博物館 National Museum of Serbia
ベオグラードの共和国広場に建つ、セルビア最大かつ最古の博物館。1902–03年に旧基金管理局(のち国立抵当銀行)の社屋として、ステヴァノヴィッチとネストロヴィッチの設計で建てられたアカデミックな折衷主義建築で、戦後の1950年に博物館へと転用された。
§1 — 概要概要
セルビア国立博物館(Народни музеј Србије / National Museum of Serbia)は、首都ベオグラードの中心、共和国広場に面して建つ、同国最大かつ最古の博物館である。ただし建物そのものは博物館のために建てられたものではなく、20世紀初頭に金融機関の社屋として設計された記念碑的な公共建築であり、半世紀を経て博物館へと転用された。先史時代から中世、近代までのセルビアと中央バルカンの文化遺産に加え、ピサロやマティスら西欧近代美術を含む40万点超を収蔵する。
歴史
博物館という機関の創設は1844年にさかのぼるが、現在の建物は1902年から1903年にかけて、基金管理局(Управа фондова、のちの国立抵当銀行)の社屋として建設された。設計はアンドラ・ステヴァノヴィッチとニコラ・ネストロヴィッチが設計競技で一等を得て担当し、セルビアで早くから基礎に鉄筋コンクリートを用いた建物の一つとなった。1929–30年にはヴォイン・ペトロヴィッチによって街区全体を埋める増築が行われている。第二次世界大戦の爆撃で中央のドームを含む主要部が損傷したが戦後に復旧され、国立博物館は1950年にこの建物へ移転、1952年に正式に開館した。1964–66年にはアレクサンダル・デロコらによる大規模改修でドームが再建されている。2003年から15年に及ぶ全面改修のため閉鎖され、2018年に再開した。
建築的特徴
ファサードは左右対称のアカデミックな構成をとり、入口部の双柱とペディメント、彩色を施した壁面、そして中央と両翼のリザリットに載るネオ・バロック風のドームが外観を特徴づける。装飾の基調はネオ・ルネサンスにあり、そこにネオ・バロックの要素が重ねられた、19世紀末から20世紀初頭の折衷主義を体現する。内部では銀行の中核空間であった記念碑的な大階段とカウンターホールに最も意匠が注がれ、後者は今日では博物館のアトリウムや図書室として用いられている。
意義・現在
旧基金管理局=抵当銀行の社屋は、19世紀末から20世紀初頭のベオグラードを彩った記念碑的公共建築の代表例であり、ステヴァノヴィッチ=ネストロヴィッチという設計者コンビの代表作でもある。金融の安定と国家の進歩を可視化するために建てられた建物が、戦災と転用を経て国民的な文化施設へと姿を変えた経緯は、この建物の歩みそのものを物語る。1979年にはセルビアの特別重要文化財に指定され、2018年の全面改修を経て、最新の保存環境を備えた展示施設として再び公開されている。