国立劇場 (オスロ) National Theatre Oslo
オスロの中心部、王宮と国会議事堂のあいだに建つノルウェー国立劇場。1899年にヘンリク・ブルの設計で開場した、ネオ・バロックを基調とする折衷主義の劇場で、イプセン作品上演の本拠地として知られる。
§1 — 概要概要
国立劇場(Nationaltheatret)は、ノルウェーの首都オスロの中心部、王宮と国会議事堂のあいだに建つ、同国を代表する演劇の殿堂である。1899年に開場し、建築家ヘンリク・ブルの設計による。正面にはノルウェーを代表する劇作家ヘンリック・イプセンとビョルンスティエルネ・ビョルンソンの彫像が据えられ、ファサードには両者と劇作家ルードヴィ・ホルベアの名が刻まれている。
歴史
劇場の起源は、1829年に設立されたクリスチャニア劇場(クリスチャニアはオスロの旧称)にさかのぼる。19世紀後半、ノルウェー語による国民的な舞台を求める気運が高まるなか、新たな国立劇場の建設が計画された。建設地をめぐっては近隣の大学などから反対もあったが、イプセンやビョルンソンらの名声を背景に計画は実現へ向かう。設計は当時まだ若手だったヘンリク・ブルが担い、1899年9月に最初の公演を迎えた。こけら落としはホルベアの作品、イプセン『民衆の敵』、ビョルンソン『シーグル・ヨルサルファル』の三作が日を分けて上演された。創設当初は私立の組織として運営され、たびたび財政難に見舞われたが、1929年から国の支援を受けるようになった。以来、イプセン作品上演の本拠地と目され、その戯曲のほとんどが本劇場で演じられてきた。
建築的特徴
建物は黄色い煉瓦に花崗岩や石灰岩を組み合わせた重厚な外観を持ち、19世紀末スカンディナヴィアの折衷主義的な歴史主義建築に位置づけられる。ネオ・バロックやネオ・ロココを基調としつつ、ベルリンの古典主義やアール・ヌーヴォーの要素が混ざり合う点に、様式の選択が自由になった時代の特徴がよく表れている。中央にはペディメントを戴く堂々たるファサードが構えられ、予算の制約から石材はおもに入口まわりに集中して用いられ、格式を演出している。内部には豪華な装飾を施した観客席が広がり、優れた音響で知られる。
意義・現在
国立劇場は、スウェーデンとの連合下にあったノルウェーが、独自の言語と文化を舞台芸術の場で確立しようとした国民的事業の象徴である。設計者ブルは本作を足がかりに、同国アール・ヌーヴォーの代表作とされるオスロ歴史博物館(1902年)などを手がけていく。竣工から120年以上を経た今日も現役の劇場として用いられ、1983年には文化財として保護の対象となった。毎年開かれるイプセン・フェスティバルの会場としても、国内外の演劇人を引きつけている。