ベオグラード国立劇場 National Theatre in Belgrade
セルビアの首都ベオグラードの共和国広場に建つ国立劇場。1868年に礎石が据えられ、アレクサンダル・ブガルスキの折衷主義的な設計によって翌年に開場した、セルビア演劇文化を象徴する建築である。
§1 — 概要概要
ベオグラード国立劇場(National Theatre in Belgrade / Народно позориште)は、セルビアの首都ベオグラード中心部、共和国広場の一角に建つ劇場である。19世紀後半に創設され、現在はオペラ・バレエ・演劇の三つの専属団体を擁する、セルビアを代表する舞台芸術の拠点として知られる。建物自体も、近代セルビアの首都形成と歩みをともにした歴史的建造物である。
歴史
劇場の設立は1868年に遡る。同年、オーストリア=ハンガリー領ノヴィ・サドのセルビア国立劇場の公演に感銘を受けたミハイロ公が、その創設者ヨヴァン・ジョルジェヴィッチをベオグラードに招き、新たな劇場の設立を委ねた。建設用地には、1866年に取り壊されたスタンボル門の跡地である現在の共和国広場が選ばれた。ミハイロ公は完成を見ずに同年暗殺され、礎石は後継のミラン公によって据えられた。劇場の設計を担ったのは、セルビア建設・公共事業省の国家建築家アレクサンダル・ブガルスキであり、開場は1869年である。その後、戦災や時代の要請に応じて幾度も改修・再建を重ね、今日に至る外観へと整えられた。
建築的特徴
ブガルスキの設計は、特定の様式に純粋に従うのではなく、複数の歴史的様式の語彙を折衷的に組み合わせる折衷主義に基づく。創建時の建物はミラノのスカラ座を範としたとされ、整然としたファサードに装飾的な開口部を連ねる劇場建築の体裁をとった。度重なる改修によって細部は変化したが、都市の主要広場に正対する象徴的な構えは一貫して保たれている。
意義・現在
ベオグラード国立劇場は、1983年に「特別に重要な文化財」に指定され、セルビア共和国の保護下に置かれている。2014年には、ヨーロッパの歴史的劇場をたどる文化ルートにも組み込まれた。一国の文化的記憶を体現する建築として、また現役の上演空間として、首都の広場とともに生き続けている。