ロンドン、テムズ川に架かる跳ね橋。ロンドン塔のかたわらに立ち、その姿に調和する二つのゴシック様式の塔をもつ。1894年完成。船を通すため中央が跳ね上がる、ヴィクトリア朝の技術の精華であり、ロンドンを象徴する橋として世界に知られる。
§1 — 概要概要
タワーブリッジ(Tower Bridge)は、ロンドンのテムズ川に架かる、跳開橋と吊り橋を組みあわせた橋である。すぐかたわらに立つロンドン塔にちなんで名づけられ、その中世の城に調和するよう、二つのゴシック様式の塔をそなえる。1894年の完成以来、ロンドンを象徴する姿として、世界じゅうに知られてきた。
歴史
19世紀後半、ロンドンの東部に人口が増え、新たな橋が求められた。だが、テムズ川は港へ通じる水路でもあり、橋は船の往来をさまたげてはならなかった。この難題に応えて、市の建築家ホレイス・ジョーンズと技師ジョン・ウルフ・バリーは、中央が跳ね上がる「跳開橋(バスキュール)」を構想する。
工事は1886年に始まった。ジョーンズは着工の翌年に世を去り、その意匠はジョージ・スティーヴンソンが引き継いで、簡素な煉瓦の外装を、より華やかなヴィクトリア朝ゴシックの石造へと改めた。バリーが八年にわたる工事を統べ、1894年6月、橋はウェールズ公によって開かれた。
建築的特徴
橋は、三つの性格を一つにあわせもつ。両岸から塔までは吊り橋、二つの塔のあいだは跳開橋、そして上層の歩廊は——当初——片持ち梁の橋であった。中央の橋床は二枚の「跳ね板(バスキュール)」に分かれ、船が通るとき、油圧の力で跳ね上がる。一枚一千トンを超える橋床が、わずか数分で開く。
二つの塔は、鋼の骨組みを花崗岩とポートランド石で覆ったものである。中世の城を思わせるその外観は、近代の技術を、古い都市の景観へとなじませるための、意図された装いであった。
意義・現在
タワーブリッジは、ヴィクトリア朝の技術と、歴史を尊ぶ意匠とが、一つに結ばれた橋である。船の数が減った今も、橋は年に千回ほど跳ね上がり、川の通行をさまたげない。古い城のような姿をしながら、その内には近代の機構を秘めたこの橋は、ロンドンの最も親しまれた名所でありつづけている。