構造表現主義
Structural Expressionism年代
1850
地域
国際的
時代
現代
構造表現主義(Structural Expressionism)は、建物を支える構造そのものを、隠さずに——むしろ積極的に見せることを意匠とする立場である。柱・梁・トラス・ケーブルといった力を受け持つ要素を露出し、力の流れを目に見えるかたちで表現する。
その源流は、19世紀の鉄の建築にある。エッフェル塔や鉄道駅の大屋根は、装飾をまとわず、鉄骨の骨組みそのものを堂々とさらして、新しい美をつくり出した。20世紀には、ハイテック建築(ポンピドゥー・センターなど)として、設備や構造を建物の外側へ引き出す方向へと展開する。
この立場では、しばしば建築家よりも構造技師の役割が前面に出る。橋やスタジアムの大屋根、空港のように、大きな力を扱う建築でとりわけ力を発揮し、力学的な合理性がそのまま造形の美へと転化する。組積造が壁の量塊で空間を囲ったのに対し、構造表現主義は、力学を可視化することに美を見いだす。素材は鉄・鋼・コンクリート・ガラスといった工業の産物であり、近代以降の技術と分かちがたく結びついた態度である。20世紀後半には、ピア・ルイジ・ネルヴィのコンクリートの大空間や、フライ・オットーの軽やかな張力構造のように、力学そのものが詩的な造形へと昇華された作例も生まれた。隠すべきものを隠さず、つくり方の論理を率直に示すこの態度は、技術への信頼を最も素直に表す、近代建築のもっとも率直なひとつの系譜であり続けている。
§1