ロンドンのテムズ川南岸、ランベスに建つ高さ135メートルの大観覧車。新世紀を記念してマークス・バーフィールドが構想し、2000年に開業した。中心軸を持たず片持ちで支えられる、構造をそのまま見せる現代ロンドンの象徴である。
§1 — 概要概要
ロンドン・アイは、テムズ川南岸、ウェストミンスター橋とハンガーフォード橋のあいだ、ランベス区のジュビリー・ガーデンズに建つ大観覧車である。高さ135メートル、車輪の直径は120メートル。新たな千年紀(ミレニアム)を記念する建造物として構想され、当初はミレニアム・ホイールと呼ばれた。中心の支柱を持たず、片側のA字型の架構だけで車輪を支えるカンチレバー(片持ち)構造をとり、開業当時は世界一高い観覧車であった。
歴史
1993年、サンデー・タイムズ紙と建築財団が新世紀の記念建造物を公募したコンペに、建築家のデイヴィッド・マークスとジュリア・バーフィールド(マークス・バーフィールド・アーキテクツ)が、テムズ河畔の巨大な観覧車案を出品した。構造設計はアラップのジェーン・ワーニックが担った。コンペは該当作なしに終わったが、二人は計画を諦めず、自宅を抵当に入れて事業化を進め、ブリティッシュ・エアウェイズの出資を得て実現にこぎつけた。
建設は1998年に始まった。鋼材はイギリス、ケーブルはイタリア、カプセルはフランス、車軸はオランダと、部材をヨーロッパ各地で製作し、テムズ川上の浮き台の上で水平に組み立てて、1999年に起立させた。同年の大晦日にトニー・ブレア首相により公式に「オープン」されたが、カプセルの不具合のため、実際に一般客を乗せて運行を始めたのは2000年3月9日であった。当初は五年間の暫定設置の予定だったが、人気を博し、2002年に恒久施設として認められた。
建築的特徴
ロンドン・アイの設計は、構造そのものを意匠として見せる構造表現主義の系譜にある。発想の原点は自転車の車輪であり、外周のリムを細いスポーク状のケーブルが内側へ引いて支える。中心軸で支える通常の観覧車と異なり、川側に65度で傾くA字型の架構が片側だけで全体を受け止める、前例のない片持ち構造を採った。32個のガラスのカプセルは車輪の外周に取り付けられ、視界をさえぎるものがない。総重量は約2,100トンに及ぶが、鋼とガラスと張られたケーブルによる構成は軽やかに見える。
意義・現在
ロンドン・アイは、歴史的建造物が占めてきたロンドンのスカイラインに、現代建築が並び立つことを示した。リチャード・ロジャースは、エッフェル塔がパリにもたらしたものを、この観覧車がロンドンにもたらしたと評している。年間300万人を超える、英国でもっとも人気のある有料観光施設であり、大晦日の花火をはじめとする都市の祝祭の中心ともなっている。当初は仮設として構想されたものが、いまではロンドンを象徴する恒久の風景となった。