ブロブ建築
ブロブ建築(blobitecture)は、アメーバや水滴を思わせる、丸みを帯びた有機的な塊(ブロブ)として建物を造形する建築の傾向である。直交する柱梁の格子から離れ、連続して波打つ曲面で全体を包む点に最大の特徴がある。「ブロブ」の語は1990年代に建築家グレッグ・リンが、コンピュータ上で扱う柔らかな立体を指して用いたことに由来し、様式というよりも、デジタル技術が可能にした形態の一族を指す呼び名である。
複雑な自由曲面は、手描きの製図では制御がきわめて難しい。三次元のモデリングと、CAD/CAMによる部材ごとの加工・施工が普及してはじめて、こうした非定型の外皮を現実の建物として組み立てられるようになった。外皮を覆う曲面パネルは一枚ごとに寸法が異なるため、その量産には情報技術の支えが欠かせない。脱構築主義が解体した直交の秩序を、デジタルの設計環境がなめらかな連続体として描き直した、と位置づけることもできる。
代表例としては、グラーツのクンストハウス(2003年、ピーター・クックとコリン・フルニエ)が、青いアクリルの外皮をまとう「フレンドリー・エイリアン」として広く知られる。バーミンガムのセルフリッジズ百貨店のように、商業建築にも展開した。周囲の街並みとの対比を生む示威的な姿は、観光や都市再生の象徴として用いられる一方で、内部の展示や使い勝手との折り合いをめぐる議論も呼んだ。やがてこの曲面への志向は、環境性能と造形を結ぶパラメトリック・デザインへと引き継がれていく。