オーストリア、グラーツのムーア川岸に建つ現代美術館。2003年の欧州文化首都を機に開館したピーター・クックとコリン・フルニエの設計で、青く光る曲面の塊が「フレンドリー・エイリアン」と呼ばれるブロブ建築の代表作である。
§1 — 概要概要
クンストハウス・グラーツ(Kunsthaus Graz)は、オーストリア南東部の古都グラーツの中心部、ムーア川の右岸に建つ現代美術館である。バロック以来の赤瓦の街並みのただなかに、青く光る巨大な曲面の塊が浮かぶ姿は、設計者自身によって「フレンドリー・エイリアン(人なつこい宇宙人)」と名づけられた。1960年代以降の現代美術を主題とする展示施設で、ウニフェルザールムゼーウム・ヨアネウムの一翼を担う。
歴史
構想は長く難航し、1988年と1998年の設計競技は実現に至らなかった。2000年の三度目のコンペで、ロンドンを拠点とするピーター・クックとコリン・フルニエの案が選ばれる。2003年にグラーツが欧州文化首都に選ばれたのを機に建設が進み、2001年に着工、祝祭にあわせて2003年9月に開館した。隣接する「鉄の館(アイゼルネス・ハウス)」は19世紀半ばに鉄骨で建てられた商業建築で、その歴史的なファサードを保存しながら新館に接続している。
建築的特徴
建物は直交する柱梁の格子を退け、内臓のような自由曲面で全体を包むブロブ建築の作例である。外皮は千枚を超える青いアクリルパネルからなり、一枚ごとに三次元に成形されている。屋上からは採光のための十六本の「ノズル」が斜めに突き出し、うち一基は城山の時計塔へと向く。川に面した東面には、九百三十本の蛍光灯を仕込んだメディアファサード「BIX」が組み込まれ、外壁そのものを低解像度の画面として映像を映し出す。
意義・現在
収蔵を持たず、国際的な企画展に特化した「美術の生産を見せる場」として運営される。鉄とガラスの時代に生まれた実験精神を、デジタル技術による曲面として現代に引き継いだ建物であり、周囲との徹底した対比によって、文化による都市再生の象徴ともなった。BIXファサードの構想は2011年にニューヨーク近代美術館の収蔵に加えられ、建築とメディアを融合させた先駆例として評価されている。