EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture

シトー会建築

Cistercian architecture
年代
1120 — 1300
地域
西ヨーロッパ
時代
中世

シトー会建築は、12世紀に西ヨーロッパで興ったシトー修道会の理念にもとづく建築様式である。1098年にフランス・ブルゴーニュのシトーに創設された同会は、当時のクリュニー会の華美な聖堂装飾を厳しく批判し、清貧・労働・祈りを旨とする原始ベネディクト戒律への回帰を唱えた。その精神は建築にも貫かれ、彫刻や色ガラス、金銀の装飾を排した簡素で明晰な空間が追求された。

形態の面では、半円アーチと厚い壁を基調とするロマネスクから、尖頭アーチやリブ・ヴォールトを用いる初期ゴシックへの過渡的な性格をもつ。聖堂はしばしば塔をもたず、東端を平らに閉じた方形内陣や、控えめな高さの身廊を特徴とし、光は無色のガラスを通して静かに導かれる。修道院は聖堂・回廊・参事会室・食堂・宿坊などを規則的に配し、自給自足の共同生活に応じた合理的な平面をとった。聖堂内部では、祈りに専念する修道士と、農地や工房で労働を担う助修士(コンヴェルスス)の空間が仕切りで分けられた。また谷あいに営まれた修道院では、水路や噴水、製粉用の水車を組み込んだ精緻な水利施設が発達し、技術への合理的な関心がうかがえる。各地の修道院がほぼ共通の構成をもつのは、会の規範が建築の標準化を促したためである。

シトー会は12〜13世紀にヨーロッパ全域へ急速に広がり、フランスのフォントネー修道院、スペインのポブレー修道院、イングランドのファウンテンズ修道院など、各地に同様式の修道院を残した。装飾を退け、比例と構造そのものに美を見いだすその姿勢は、のちのゴシック建築の合理的精神を準備するものとして、建築史上に重要な位置を占める。

シトー会建築
§1

代表建築

Buildings