EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture

ゾン

dzong
年代
1200
地域
チベット・ブータンを中心とするヒマラヤ地域
時代
中世

ゾンは、チベット文化圏に成立した、城塞と僧院と政庁を一つの建物にまとめる建築の類型であり、その形式に由来する様式の呼称でもある。語そのものは砦を意味し、谷の出入口や河川の合流点、丘の頂といった要害の地に築かれる例が多い。最大の特徴は、外へ向かって閉じた分厚い外壁である。壁は石または日干し煉瓦を積み、下方を厚く上方を薄くして内側へ傾斜させる。この逃げ勾配は重心を下げて地震に耐えるとともに、外観に山の斜面と呼応する安定感を与える。窓は下層で小さく、上層ほど大きくとられ、上端に黒い縁取りと小庇を伴う。壁の最上部には赤褐色の帯を水平に巡らせ、白く塗られた壁面との対比を強調する。外殻の内側は木造である。柱と梁、彩色を施した持ち送りが床を支え、中庭を囲んで集会堂・仏堂・僧房・執務室が積み上げられる。ブータンの作例では中庭の中央に塔状の高い棟を立て、僧院の領域と行政の領域を左右に分けるものが多い。石の外皮と木の内部という二重構造は、寒冷な高地の気候と、防御・宗教・統治という複数の機能を一つの塊に収める要請から生まれた。ブータンでは17世紀にシャブドゥン・ンガワン・ナムゲルが各地にゾンを築き、その多くは現在も県庁と僧院を同居させる建物として使われている。チベットではラサのポタラ宮がこの系譜の最大の到達点であり、丘そのものを基壇とすることで都市全体を睥睨する。ゾンは図面によらず棟梁の口伝と経験によって建てられてきたと伝えられ、その工法は今日も部分的に継承されている。

ゾン
§1

代表建築

Buildings
ゾン ポタラ宮
1694 · ラサ
ポタラ宮

チベット・ラサのマルポリの丘に建つ、歴代ダライ・ラマの冬の宮殿。1645年にダラ…