ミニマリズム
建築におけるミニマリズムとは、形態・材料・仕上げの要素をぎりぎりまで減らし、残ったものの質と、そこに生じる光や手触りによって空間を成立させようとする態度をいう。1960年代のアメリカ美術で、作者の身ぶりを消した単純な立体を提示した一群の作品がミニマル・アートと呼ばれたことに名を負うが、建築では1980年代から1990年代にかけて、ポストモダンの引用と装飾への反動として明確な潮流となった。近代建築の機能主義も装飾を排したが、両者の狙いは同じではない。機能主義が用途と生産の合理性から装飾を退けたのに対し、ミニマリズムは知覚そのものを主題とする。壁は白いから白いのではなく、光の変化を受け止める面として選ばれる。したがって具体的な手つきは、目地や見切りを消して面を連続させること、開口部の枠を隠して光だけを見せること、コンクリート・石・木・ガラスといった少数の材料をそのまま用い、その物性の差だけで空間を区切ることに集中する。省略の分だけ、寸法と納まりの精度が仕上げの美しさを直接左右する。代表的な作り手として、コンクリートの箱に光の筋を導く安藤忠雄、白と光の関係を突き詰めたジョン・ポーソンやアルベルト・カンポ・バエザ、そして土地の石を積んで山に埋めたヴァルスの温泉浴場を設計したピーター・ズントーが挙げられる。ズントーが「雰囲気」と呼ぶ、素材と温度と音が身体に働きかける総体への関心は、抽象的な還元にとどまらないこの潮流のもう一つの側面を示している。前後の関係でいえば、ミース・ファン・デル・ローエの「レス・イズ・モア」を遠い祖に持ち、ポストモダンへの反措定として現れ、現代の禁欲的な住宅・美術館の設計に広く定着した。