レンガ表現主義建築
チリハウス
ドイツ・ハンブルクのオフィスビル(コントーアハウス)。チリの硝石貿易で財を成…
建築家 / Architect
フリッツ・ヘーガー(Fritz Höger、本名ヨハン・フリードリヒ・ヘーガー、1877–1949年)は、ドイツのレンガ表現主義を代表する建築家である。北ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン、ベーケンライエの大工の家に生まれた。14歳で大工修業を始め、ハンブルクで建築工芸を学んだのち、設計事務所で製図技師として経験を積み、1907年に自らの事務所を開いた。正規の建築教育を受けていなかったため、ドイツ建築家協会には加入を認められなかった。
ヘーガーは、北ドイツに根づく煉瓦建築の伝統を受け継ぎ、クリンカーの質感と、光と影が生む陰影に強い関心を寄せた。装飾を排そうとするバウハウス=新即物主義の潮流とは対照的に、鋭く角ばった造形と彫塑的な装飾によって、煉瓦に表現の力を与えようとした。
その頂点が、ハンブルクのオフィスビル、チリハウス(1922〜24年)である。船の舳先を思わせる鋭角の造形で世界的に知られ、ヘーガーの名を不動のものにした。ほかにも、隣接するコントーアハウスのシュプリンケンホーフ、ハノーファー初の高層建築アンツァイガー=ホーホハウス、ベルリンのホーエンツォレルン広場教会など、多くの作品を残している。
晩年、ヘーガーは国家社会主義(ナチズム)に接近し、1932年に党へ加わった。しかし、彼の表現主義的な作風は古典主義を好むナチスの趣味に合わず、国家建築家の地位を得ることはなかった。その作品群は近代ドイツにおける煉瓦建築の到達点として評価され、2008年には煉瓦建築を顕彰する「フリッツ・ヘーガー賞」が創設されている。