チリハウス Chilehaus
ドイツ・ハンブルクのオフィスビル(コントーアハウス)。チリの硝石貿易で財を成したスローマンの依頼により、フリッツ・ヘーガーが1922〜24年に建てた。船の舳先を思わせる鋭角の東端で知られる、レンガ表現主義の代表作。世界遺産。
§1 — 概要概要
チリハウス(Chilehaus)は、ドイツ・ハンブルクのコントーアハウス地区に立つ10階建てのオフィスビルである。1920年代の北ドイツに広まったレンガ表現主義(Backsteinexpressionismus)の代表作として知られ、船の舳先のように鋭くとがった東端の造形で名高い。2015年、周囲のコントーアハウス地区および倉庫街シュパイヒャーシュタットとともに、ユネスコ世界遺産に登録された。
歴史
施主は、実業家ヘンリー・B・スローマンである。若くして無一文でチリへ渡り、硝石(チリ硝石)の貿易で巨富を築いた人物で、建物の名もこの縁に由来する。1921年、スローマンはフィッシャートヴィーテ通りを挟む約6,000平方メートルの二つの敷地を取得し、建築家フリッツ・ヘーガーに設計を委ねた。
建設は、ドイツがハイパーインフレーションに苦しむ1922年から1924年にかけて行われた。混乱と失業のさなか、最盛期には4,000人もの職人が同時に働き、約480万個のクリンカーが積み上げられた。完成したチリハウスは、当時のドイツでも有数の規模を誇るオフィスビルとなった。
建築的特徴
最大の見どころは、ポンペン通りとニーダーン通りが鋭角に交わる東の角である。二つのファサードがここで一点に集まり、まるで船の舳先のようにせり出す。S字を描く湾曲した壁面と、上層階を段々に後退させるセットバックの手法により、巨大な建物でありながら全体に軽やかさをまとう。
外観を覆うのは、天候によって表情を変える暗色のクリンカーである。7段ごとにレンガを45度ねじって積むことで、面に細かな陰影と輝きが生まれる。彫刻家リヒャルト・キュールによる装飾も施され、チリの国章にちなむコンドル像などが、海運都市ハンブルクと施主の物語を建物に刻んでいる。
意義・現在
チリハウスは、煉瓦という素材の表現力を極限まで引き出した建築として、ハンブルクのランドマークとなった。1943年の空襲を免れて現存し、1983年には記念物に登録されている。現在もオフィスや店舗、カフェが入る現役の建物である。東側の交差点から見上げる舳先の眺めは、ハンブルクでもっとも知られた建築風景の一つである。