EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture
イタイプダム
© Angelo Leithold / CC BY-SA 3.0
FIG. 01 — Q244169

イタイプダム Itaipu Dam

Represa de Itaipú/Usina Hidrelétrica de Itaipu

ブラジルとパラグアイの国境、パラナ川に築かれた巨大水力発電ダム。両国の共同事業として1975年から建設され、1984年に発電を開始した。発電量で長く世界最大級を誇り、20基の発電機による設備容量1,400万kWは両国の電力供給の柱となっている。

FIG. 02 — Location25.4078° S 54.5900° W
PY アルト・パラナ県 エルナンダリアス
§1 — 概要

概要

イタイプダム(Represa de Itaipú/Usina Hidrelétrica de Itaipu)は、ブラジルとパラグアイの国境をなすパラナ川に築かれた巨大な水力発電ダムである。両国が折半で所有・運営する国際共同事業として建設され、1984年に発電を開始した。設備容量は20基の発電機で1,400万kW(14GW)に達し、年間発電量では長く世界最大級を保ってきた。「イタイプ」は近くにあった島の名に由来し、先住民のグアラニー語で「響く石」を意味する。

歴史

パラナ川の水力をめぐっては、1960年代にブラジルとパラグアイのあいだで国境紛争があった。1966年の「イグアスの議定書」で共同開発の方針が定まり、1973年4月の「イタイプ条約」によって発電と費用・便益の折半が取り決められた。翌1974年には事業主体イタイプ・ビナシオナルが設立される。設計はイタリアのELCエレクトロコンサルトと米国のIECOからなる国際コンソーシアムが担い、両国の混合技術委員会が事業を統括した。主要な建設工事は1975年から進み、1982年に貯水池が湛水を始めた。これによって流量で世界最大級を誇ったグアイラ滝は水没し、約1万世帯が移転を余儀なくされた。1984年に最初の発電機が稼働し、以後ほぼ毎年のように増設が続いて、最後の2基が2007年に運転を開始して全20基がそろった。

建築的特徴

イタイプは単一形式のダムではなく、地形に応じて複数の型式を連ねた全長およそ8kmの構造物である。主要部には堤体の自重で水圧を受け止める重力式ダムとバットレス(扶壁)式を組み合わせ、両翼にはアースフィル(土)とロックフィル(岩)のダムを接続する。最大の高さはおよそ196mに及ぶ。発電所には落差約118mを利用する700MW級の発電機が並び、うち10基はパラグアイ向けに50Hz、10基はブラジル向けに60Hzで発電するという、二つの電力系統を一つの施設に同居させた珍しい構成をとる。

意義・現在

完成当時、イタイプは世界最大の水力発電所であり、2016年には年間発電量で中国の三峡ダムを上回る記録も残した。パラグアイの電力需要のほぼ全量と、ブラジルの相当部分をまかなう、両国経済の基盤というべき存在である。一方で、条約に定められた電力配分や価格をめぐってパラグアイ側の不満が長く残り、2009年に支払い条件が見直されるなど、二国間の政治的論点を抱え続けてきた。巨大インフラがもたらす便益と、環境・社会への影響、そして国家間の利害調整という現代的な課題を凝縮した構築物である。

関連する建築

Related
データ: Wikidata (Q244169) / 画像: © Angelo Leithold / CC BY-SA 3.0 — Wikimedia Commons
LAST EDIT — 2026.06.25
ENTRY ID — BLD-0399