構造表現主義
ガラス建築(glass architecture/Glasarchitektur)は、ガラスを通常の開口部の域を超えて大規模に用い、透明性そのものを建築の主題とする設計の系譜をいう。単一の時代様式ではなく、19世紀の技術革新から現代に至る、素材を軸にした一本の流れとして捉えられる。
前提となったのは板ガラスの量産と鉄の骨組みである。手吹きの円筒法から機械化された製法へ移り、大判のガラスが安価に得られるようになると、荷重を鉄骨が負担し、壁面をガラスで塞ぐ構成が可能になった。温室と鉄道駅がその実験場となり、1851年のロンドン万国博覧会のためにジョゼフ・パクストンが建てた水晶宮が、規格部材の反復とガラス被覆によって初めてこれを都市的な規模で示した。
20世紀に入ると、透明性は技術の帰結であることをやめ、思想の表明となる。詩人パウル・シェーアバルトの『ガラス建築』(1914年)とブルーノ・タウトのガラスの家は、光を透す建築が人間の精神を変えるという理念を掲げた。モダニズムはこれを合理主義の側から引き継ぎ、ミース・ファン・デル・ローエのガラスの摩天楼案、そして荷重を負わないカーテンウォールの一般化によって、ガラスの箱は20世紀後半のオフィス建築の標準形となった。
形態上の特徴は、閉じた壁面の消失、内外の視覚的な連続、そして骨組みの露出にある。一方で、日射による熱負荷と冷暖房の負担という弱点を抱え、複層ガラス、低放射(Low-E)膜、ダブルスキンといった技術がその克服にあてられてきた。気候変動への対応が建築の中心的な課題となった現在、全面ガラスの是非そのものが問い直されている。