EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture

マヌエル様式

Manueline
年代
1490 — 1540
地域
ポルトガル
時代
ルネサンス

マヌエル様式は、ポルトガル王マヌエル1世(在位1495〜1521年)の治世に花開いた、後期ゴシックから初期ルネサンスへの過渡期に位置する独特の建築様式である。様式名は王の名に由来し、19世紀の歴史家によって遡及的に名づけられたもので、その盛期は実際にはわずか一世代ほどにとどまる。構造の骨格は後期ゴシックの肋骨ヴォールトや尖頭アーチを受け継ぎながら、表面を覆う装飾の主題に、大航海時代のポルトガルならではの海洋的イメージを大胆に取り込んだ点に最大の特徴がある。石に彫り出された綱や結び目、碇、サンゴ、輪を組んだ渾天儀、そしてクリスト騎士団の十字が、窓枠や扉口、欄干、円柱に絡みつくように展開する。渾天儀は航海と天測を象徴するマヌエル1世個人の紋章でもあり、王権と海外進出を可視化する記号として繰り返し用いられた。アフリカやアジアとの接触によってもたらされた異国趣味や、イベリア半島に根づくムデハル(イスラーム的)装飾の影響も混じり、写実的な植物文や奇怪な動物像が加わる。代表作はリスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔であり、いずれも世界遺産に登録されている。ほかにトマールのキリスト修道院の窓、バターリャ修道院の「未完の礼拝堂」などが名高い。マヌエル様式は中世ゴシックの構築論理の上に立ちつつ、やがて続くルネサンスの古典主義へと吸収されて短命に終わったが、ポルトガルが海によって世界とつながった時代の記憶を、石の装飾として今に伝えている。その造形は後年、19世紀のロマン主義のなかでネオ・マヌエル様式として再評価された。

マヌエル様式
§1

代表建築

Buildings
マヌエル様式 ベレンの塔
1519 · リスボン
ベレンの塔
Francisco de Arruda

リスボンのテージョ川河口に建つマヌエル様式の要塞塔。大航海時代の出航と帰着を…