ジェロニモス修道院 Jerónimos Monastery
リスボン、ベレン地区に建つマヌエル様式の最高傑作。1502年着工、大航海時代の富で約一世紀をかけて造営され、ヴァスコ・ダ・ガマらが眠る。
§1 — 概要概要
ジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jerónimos)は、ポルトガル・リスボン西部のベレン地区、テージョ川の河口近くに建つ、かつての聖ヒエロニムス会の修道院である。ポルトガル後期ゴシックの華であるマヌエル様式を代表する建築で、1502年の着工から約一世紀をかけて造営された。大航海時代の富を背景にした壮麗な石の装飾で知られ、探検家ヴァスコ・ダ・ガマらの墓所でもある。
歴史
マヌエル1世は、ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路開拓を記念し、また航海者の守護を願って、ベレンの旧聖堂の地に大修道院の造営を命じた。最初の主任建築家ディオゴ・ボイタクが教会・修道院・回廊の基礎を据え、1517年にカスティーリャ出身のジョアン・デ・カスティーリョが後を継いで身廊や南門、回廊を進めた。1521年の王の死で工事は一時中断するが、1550年からディオゴ・デ・トラルヴァがルネサンス様式で再開し、内陣はジェロニモ・デ・ルアンの手で整えられて、16世紀末にほぼ完成した。1834年の修道会解散を経て、現在は国の管理下にある。
建築的特徴
教会堂は、三廊がほぼ同じ高さに揃うホール式の空間で、わずか数本の細い八角柱がリブ・ヴォールトを支える。とりわけ翼廊の天井は柱を立てずに大きく架け渡され、宙に浮くような印象を与える。石の表面には、綱・錨・渾天儀・植物といった航海と自然の文様が刻まれ、マヌエル様式特有の濃密な装飾をなす。彫刻家ニコラ・シャントレーヌによる西扉口はゴシックからルネサンスへの移行を示し、カスティーリョの手になる回廊には銀細工を思わせるプラテレスコの意匠が広がる。食堂には18世紀のアズレージョが残る。
意義・現在
ジェロニモス修道院は、ポルトガルが世界の海へ乗り出した時代の記念碑であり、国家の威信と信仰、そして海洋帝国の富を石に刻んだ建築である。マヌエル様式の最高峰として、後の新マヌエル様式の復興にも影響を与えた。1983年にはベレンの塔とともにユネスコの世界遺産に登録され、ポルトガルの国定記念物でもある。内部にはヴァスコ・ダ・ガマや詩人ルイス・デ・カモンイスの墓が置かれ、国民的な記憶の場として今日も多くの人を迎えている。