モンソロー城 Château de Montsoreau
フランス、ロワール渓谷のモンソローに立つ城館。10世紀の砦に始まり、現存の建物は1450〜60年にジャン・ド・シャンブがフランボワイヤン・ゴシック様式で再建した。ロワール川の河床に直接建てられた最初の城館として知られる。
§1 — 概要概要
モンソロー城(Château de Montsoreau)は、フランス中西部、ロワール川とヴィエンヌ川が合流する地点に立つ城館である。アンジュー、ポワトゥー、トゥーレーヌという三つの歴史的地方が接する要衝に位置し、フランボワイヤン・ゴシック様式の華やかな姿で知られる。ロワール渓谷に点在する城館群のなかでも、川の河床に直接基礎を据えて建てられた最初の一つとされ、水辺に立つ独特の景観をもつ。
歴史
この地には、10世紀末に築かれた砦が城下集落の繁栄の起点となった。20世紀末の修復工事では、その最初期の城の一部や、ガロ・ローマ期の建材が発見されている。現存する城館は、それとは別に、1450年から1460年にかけて、シャルル7世・ルイ11世に仕えた顧問官で王国有数の富豪ジャン・ド・シャンブによって再建されたものである。19世紀には、作家アレクサンドル・デュマが小説『モンソローの奥方』(1845〜46年)の舞台としてこの城を描き、その名を広く知らしめた。城館の各部は1862年・1930年・1938年に歴史的記念物に指定されている。2015年以降は現代美術のコレクションを収める美術館として活用されている。
建築的特徴
モンソロー城は、中世の城塞から居住性を重んじる城館(シャトー)へと移行する時期の建築である。防御を主眼とした閉じた要塞ではなく、大きな窓や装飾的な階段塔をもち、居住と威信の表現に重きが置かれている。フランボワイヤン・ゴシック様式に特有の、火炎のように波打つ狭間飾り(トレーサリー)や繊細な石の彫刻が、ファサードや開口部を飾る。一方で、石落としなど中世以来の防御的要素も残し、時代の過渡的な性格をとどめている。ロワール渓谷でこの後に展開する初期ルネサンスの城館群の先触れとして位置づけられる。
意義・現在
モンソロー城は、後期ゴシックからルネサンスへと移りゆくロワール渓谷の建築史を象徴する存在である。ロワール川に足を浸すように立つ姿は、防御のための立地から、風景と一体となった居住の場へという城館の性格の変化を体現している。2000年に登録された世界遺産「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌの間のロワール渓谷」の範囲に含まれ、その文化的景観を構成する一要素となっている。現在は現代美術館として公開され、歴史的建造物を現代の文化施設として再生した事例でもある。