ナーガラ様式
ナーガラ様式(Nāgara)は、北インドを中心に発達したヒンドゥー寺院建築の様式である。グプタ朝期(5〜6世紀)に原型が現れ、中世を通じて北インド一帯に広がった。南インドのドラヴィダ様式、両者の中間に位置するヴェーサラ様式と並ぶ、インド寺院建築の三大様式のひとつに数えられる。
最大の特徴は、聖室(ガルバグリハ)の上に立つ砲弾形の塔シカラである。シカラは、水平の層を積むドラヴィダ様式のヴィマーナと異なり、垂直の稜線で分割された曲線的な輪郭をもって一気に立ち上がり、頂部を環状石材アーマラカと頂華カラシャで結ぶ。平面は聖室と前室マンダパを軸線上に連ね、外壁は神像や唐草の彫刻で覆われる。基壇から塔頂までを一個の有機的な高まりとしてまとめる点に、ナーガラの造形原理がある。
地域や時代により多くの亜流が生まれた。オリッサのカリンガ様式、中央インドのカジュラーホー群、西インドのグジャラート・ラージャスターンに展開したマール・グルジャラ(ソランキー)様式などが知られ、それぞれシカラの分節や彫刻の密度に独自の展開を見せた。
近現代の寺院建築にもナーガラの語彙は受け継がれており、ソームプラ家のような世襲の寺院建築家が、造営の規範であるシルパ・シャーストラを伝えてきた。2024年に主祠堂が開堂したアヨーディヤーのラム・マンディールは、マール・グルジャラの流れをくむ現代のナーガラ建築として造営されたものである。