ロシア建築
黄金の環
モスクワ北東に点在する古都を結ぶ周遊路。1967年に記者ユーリー・ブイチコフが命…
ロシア木造建築は、木を主材料とするロシアの伝統的な建築の系譜である。住居、倉、城砦や橋から教会堂までを含み、コラ半島からロシア中部、ウラル、シベリアにかけて分布するが、遺構はとくにロシア北部に多い。
構造の基本は、丸太を水平に積み上げ、隅部で組み合わせて壁とする丸太組み(ログハウス)の工法である。寒冷な森林地帯では断熱性にすぐれる点が重んじられ、針葉樹の豊富な北方で発達した。石材は地中深くにあって得にくく、煉瓦も長く一部の重要建築にしか用いられなかったため、木は住まいと信仰の空間をつくる最も身近な素材であった。装飾は、破風板や窓枠など構造上の要所に施す木彫が中心となる。
宗教建築は正教会の石造聖堂を手本としながら、木造ならではの形を生んだ。方形の箱状の堂を連ねる形式、八角形の軸部に高い天幕屋根を載せる形式、小さなドームを段状に重ねる多ドームの形式などがあり、屋根やドームは木製の薄板で葺かれることが多い。22のドームを重ねたキジ島の顕栄教会(プレオブラジェーニエ教会、1714年起工)はその頂点に位置づけられる。
最盛期は15〜18世紀のロシア北部にあるが、この地域の建築もバロックや古典主義の影響を免れなかった。19世紀には木造建築のモチーフが歴史主義のロシア様式に取り入れられた。火災や腐朽のため、14〜16世紀にさかのぼる宗教建築はわずかで、現存する住居の最古例は18世紀のものである。スーズダリやコストロマ、キジなどには各地の建物を移築した野外博物館が設けられているが、遺構の急速な消失は深刻な課題となっている。