ファブラ天文台 Fabra Observatory
バルセロナのティビダボ山中腹に建つ天文台。1904年、建築家ドメネク・イ・エスタパの設計で開館した。新古典主義とモデルニスモを折衷した建物で、現役の天文台としては世界有数の古さを誇る。
§1 — 概要概要
ファブラ天文台(Observatori Fabra)は、スペイン・バルセロナのコリセローラ連山、ティビダボ山の中腹(標高約411メートル)に建つ天文・気象・地震の観測施設である。バルセロナ王立科学芸術アカデミー(RACAB)が所有・運営し、開設以来途切れなく観測を続けており、現役の天文台としては世界で4番目に古いとされる。名称は建設資金を寄付した実業家カミル・ファブラ(アレリャ侯爵)に由来する。
歴史
アカデミーは19世紀末から市街地の光害を避けた新天文台の建設を構想していたが、資金難で実現しなかった。1902年に没したファブラの遺産をもとに工事が始まり、1902年から1904年にかけて建築家ジョゼップ・ドメネク・イ・エスタパの指揮で建設された。1904年4月7日、国王アルフォンソ13世の臨席のもとに開館し、初代台長には天文学者ジュゼップ・クマス・イ・ソラーが就いた。スペイン内戦期にも観測を絶やさず、2014年にはカタルーニャ州の国家的文化財(Bé Cultural d'Interès Nacional)に指定された。
建築的特徴
建物は、八角形・矩形・十字形という性格の異なる三つの棟を接合した構成をとり、観測という特殊な機能に応えている。八角形の棟には大型の屈折望遠鏡を収めるドームが載る。様式はドメネク・イ・エスタパらしい折衷主義に貫かれ、古典主義の端正な秩序を基盤としながら、細部にモデルニスモ(カタルーニャのアール・ヌーヴォー)の装飾感覚を織り交ぜている。1905年にはバルセロナ市の芸術建築コンクールで表彰された。
意義・現在
ファブラ天文台は、20世紀初頭のカタルーニャが科学と建築の双方で成熟した時代を象徴する建物である。バルセロナの「モデルニスモ巡り(Ruta del Modernisme)」にも組み込まれ、観測施設としての現役性と建築的価値を兼ね備えた稀有な存在となっている。天文・気象・地震の各部門は今日も稼働し、一般向けの天体観望や見学の場としても親しまれている。