ルクオイル・アレーナ Lukoil Arena
モスクワ北西、トゥシノ飛行場跡に立つサッカースタジアム。スパルタク・モスクワの本拠地で、2014年に開業した。AECOMが設計し、菱形のガラス板で覆った装甲のようなファサードをもつ。
§1 — 概要概要
ルクオイル・アレーナ(Лукойл Арена)は、モスクワ北西部のトゥシノ飛行場跡に立つサッカースタジアムである。名門クラブ、スパルタク・モスクワが初めて手にした自前の本拠地であり、収容人員は約45,000人。アメリカの設計コンサルティング企業AECOMが計画を担い、ロンドンのデクスター・モーレン・アソシエイツがファサードと内装を手がけた。クラブの紋章である菱形を象った、装甲のような外皮で知られる。
歴史
スパルタク・モスクワは長く専用競技場を持たず、ルジニキやロコモティフなど他球団の施設を間借りしてきた。建設計画は1990年代から幾度も頓挫し、2007年に起工式が行われたものの、行政手続きや世界的な金融危機で工事は遅延した。当初案が「平凡すぎる」として退けられたのち、2009年までにAECOMによる現在の設計がまとめられ、2010年に本格的な建設が始まった。2014年9月5日に開場し、こけら落としではスパルタクとレッドスター・ベオグラードが対戦した。命名権により当初はオトクリティエ・アレーナと称し、FIFAの大会時はスパルタク・スタジアムの名で2017年コンフェデレーションズカップと2018年W杯の会場となった。2024年にルクオイル・アレーナへ改称された。
建築的特徴
鉄筋コンクリートを主構造とし、鉄骨を併用したボウル型の観客席を、四分の三周にわたる二層の連続スタンドが囲む。最も特徴的なのは、約600枚の菱形ガラス板(シングル)で全体を覆ったファサードである。一枚が四枚のガラスからなり、赤と白に彩られた板が建物の曲面に沿って鱗のように連なって、スパルタクの紋章に通じる「装甲」の表情をつくる。ファサードのエンジニアリングはビューロ・ハッポルドが担当した。西側スタンドには48の貴賓室と多数のビジネス席を備え、UEFAの上位基準に対応する。
意義・現在
ルクオイル・アレーナは、公費に頼らず民間資本で建てられたロシアでも数少ないスタジアムであり、当初はW杯招致用ではなかったが、工期の都合から2018年W杯の会場に組み込まれた。クラブの色と紋章を建築の表層に直截に翻訳した外観は、ホームスタジアムが球団のアイデンティティを体現する現代的な事例といえる。建設に合わせてモスクワ地下鉄スパルタク駅も整備され、長く完成を待たれていた駅が旅客営業を開始した。現在もスパルタク・モスクワの本拠地として使われている。