ペルー・アンデスの尾根上、標高約2400メートルに築かれた15世紀インカの王領遺跡。皇帝パチャクテクの離宮とされ、モルタルを用いない精緻な石積みと段々畑で名高い。「インカの失われた都市」として知られる。
§1 — 概要概要
マチュ・ピチュは、ペルー・アンデスの険しい尾根の上、標高およそ2400メートルに築かれた、15世紀インカ帝国の遺跡である。皇帝パチャクテクとその一族のための王領(離宮)として営まれたと考えられ、神殿・住居・段々畑が、急峻な地形に巧みに配されている。「インカの失われた都市」として、アンデス文明を象徴する遺跡として名高い。
歴史
建造はおよそ1450年、インカ帝国を急速に拡大させた皇帝パチャクテク(在位1438頃〜1471頃)の時代とされる。最盛期にはおよそ千人が暮らしたが、16世紀前半、スペインによる征服の混乱のなかで放棄された。山深い立地ゆえにスペイン人に見いだされることなく破壊を免れ、密林に覆われて忘れられた。地元には知られていたが、1911年にアメリカの探検家ハイラム・ビンガムが訪れて世界に広く紹介し、国際的な注目を集めるに至った。
建築的特徴
建築は、モルタルを用いずに石を精密に加工して組み合わせる乾式石積みのインカ様式による。石材は隙間なく噛み合い、地震の多い土地にあっても崩れにくい。斜面には無数の段々畑(アンデネス)が刻まれ、排水と土壌の管理によって高地での耕作を可能にした。太陽の神殿やインティワタナ(日時計石)など、天体の運行に合わせて配された建築も多く、信仰と暮らしと自然とが分かちがたく結びついている。
意義・現在
マチュ・ピチュは、文字をもたなかったインカが、石の加工と土木の技をもって険しい山岳に築き上げた、その文明の到達点を示す遺跡である。1983年に文化と自然の両面からユネスコ世界遺産(複合遺産)に登録され、2007年には「新・世界七不思議」にも選ばれた。今日では入場者数を制限しながら、年間百万を超える人々を迎えている。