EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture
タージ・マハル
© Yann (edited by King of Hearts / Jbarta) / CC BY-SA 3.0
FIG. 01 — Q9141
様式 · ペルシア建築 時代 · 中世 類型 · 宗教建築 ★ ユネスコ世界遺産「タージ・マハル」(1983年登録)

タージ・マハル Taj Mahal

تاج مَحَل

インド北部アーグラ、ヤムナー川南岸に立つ白大理石の霊廟。ムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンが、1631年に没した愛妃ムムターズ・マハルのために築かせた。左右対称に統御された構成と精緻な石象嵌で知られる、ムガル建築の頂点である。

FIG. 02 — Location27.1750° N 78.0419° E
インド アーグラ アーグラ
§1 — 概要

概要

タージ・マハル(Taj Mahal)は、インド北部ウッタル・プラデーシュ州アーグラ、ヤムナー川の南岸に立つ白大理石の霊廟である。ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが、若くして世を去った愛妃ムムターズ・マハルを葬るために造営した。左右対称に統御された壮大な構成と、半貴石をはめ込んだ精緻な象嵌(ぞうがん)細工によって、インド・イスラーム建築、とりわけムガル建築の到達点とされる。1983年、ユネスコの世界遺産に登録された。

歴史

ムムターズ・マハルは1631年、遠征に同行した先で出産の直後に死去した。深い悲嘆に沈んだシャー・ジャハーンは、彼女のための壮麗な墓廟を計画する。建設は同年に始まり、霊廟本体は1643年ごろにほぼ完成、付属するモスクや庭園を含む複合体の全体は1653年に整ったとされる。工事には2万人ともいわれる工匠が動員され、純白の大理石はラージャスターン地方のマクラナから、装飾に用いる宝石類はアフガニスタンやチベットなど遠隔の地から運ばれた。

設計者の名は、同時代の宮廷記録が個人を明示しないため、確実には分かっていない。シャー・ジャハーンの主任建築家ウスタード・アフマド・ラーホーリー(Ustad Ahmad Lahori)の墓碑には設計者と刻まれ、現在ではユネスコや百科事典も彼を設計者とみなすことが多い。ただし実際には、複数の建築家や工匠が持ち寄った案を取りまとめる立場であったと考えられている。ドームの設計はトルコ出身のイスマーイール・ハーン、外壁を覆うクルアーンの書はシーラーズ生まれの書家アマーナトハーンというように、各分野の名手が広く集められた。

建築的特徴

タージ・マハルは、四分庭園(チャハル・バーグ)と一体の壮大な構図として設計されている。この種の庭園は通常その中央に建物を置くが、ここでは霊廟を庭園の北端、川に臨む基壇の上に据え、南北の軸線を際立たせた。十字に走る水路は楽園のイメージを地上に写し取る。

正方形の白大理石の基壇に立つ霊廟は、各面に大きなアーチ状の窪み(イーワーン)を穿ち、上部を球根状の大ドームが覆う。頂には金属製の頂華が立つ。四隅にはわずかに外へ傾けた4本のミナレット(尖塔)が配され、万一倒れても本体を傷つけないための工夫とされる。壁面は半貴石を象嵌するパルチンカリ(ピエトラ・ドゥラ)、流麗なカリグラフィー、浮き彫りの草花文で覆われ、時刻や光の角度によって表情を変える。高さは約73メートルに及ぶ。

意義・現在

タージ・マハルは、ペルシアと中央アジア、インドの建築的伝統を統合して結晶させたムガル建築の代表作であり、その完成度と象徴性は後世のイスラーム建築に長く参照された。

晩年のシャー・ジャハーンは、王位を奪った息子アウラングゼーブによってアーグラ城塞に幽閉され、川の対岸からタージを眺めて過ごしたと伝えられる。没後は彼もムムターズの隣に葬られ、その棺だけが構図の中軸を外れて置かれたことが、徹底した左右対称のなかで唯一の例外となっている。

今日ではインド考古局(ASI)が管理し、年間数百万人が訪れる。一方で大気汚染による大理石の黄変が課題となり、定期的な清掃や周辺の環境規制が続けられている。

関連する建築

Related
同じ建築家
イスラーム建築 赤い城
1648 · デリー
赤い城
Ahmad Lahori

デリーに築かれたムガル帝国の城塞宮殿。第5代皇帝シャー・ジャハーンが新都シャー…

同じ時代
バシリカ アヤソフィア
537 · イスタンブール
アヤソフィア
Anthemius of Tralles

東ローマ皇帝ユスティニアヌス1世が6世紀に建てたコンスタンティノープルの大聖堂…

データ: Wikidata (Q9141) / 画像: © Yann (edited by King of Hearts / Jbarta) / CC BY-SA 3.0 — Wikimedia Commons
LAST EDIT — 2026.06.21
ENTRY ID — BLD-0002