ポーランド・ユダヤ人歴史博物館(POLIN) Museum of the History of Polish Jews
ワルシャワ旧ゲットー跡に建つポーランド・ユダヤ人歴史博物館(POLIN)。フィンランドの建築家ラハデルマ&マハラマキの設計により2013年に開館した。簡潔な直方体の内部を、大きく波打つ谷状の空間が貫く現代建築である。
§1 — 概要概要
ポーランド・ユダヤ人歴史博物館(POLIN)は、ワルシャワのムラヌフ地区、かつてのワルシャワ・ゲットーの中心にあたる地に建つ博物館である。ポーランドにおけるユダヤ人の千年の歴史を主題とし、向かいに建つワルシャワ・ゲットー蜂起の記念碑と対をなして立つ。設計はフィンランドの建築家イルマリ・ラハデルマとライネル・マハラマキ(ラハデルマ&マハラマキ)による。館名の「ポリン(Polin)」はヘブライ語で「ポーランド」を、また「ここに憩え」を意味し、最初のユダヤ人がポーランドへ至ったという伝説に由来する。
歴史
博物館設立の構想は1995年にユダヤ歴史研究所協会によって始められ、同年にワルシャワ市が旧ユダヤ人街ムラヌフに用地を確保した。建物の設計は2005年の国際コンペで選定され、世界各地から寄せられた100あまりの案のなかから、ラハデルマ&マハラマキによる「葦の海(Yum Suf)」案が選ばれた。施工は現地の事務所クリウォヴィッチ&アソシエイツが担い、2009年6月に定礎、2009年から2013年にかけて建設された。建物は2013年4月19日、ワルシャワ・ゲットー蜂起から70年の節目に開館し、千年の歴史をたどる常設展示は2014年10月に公開された。
建築的特徴
外観は、ガラスのフィンと銅のメッシュで覆われた抑制的な直方体で、ガラスにはラテン文字とヘブライ文字で「POLIN」の語が刷り込まれている。この簡潔な箱の内側を、大きく波打つ曲面の壁が東西に貫き、建物を二分する。うねる谷のようなこの大空間は、ポーランド・ユダヤ史に走る「裂け目」の象徴であると同時に、出エジプト記の紅海の横断にもなぞらえられる。設計者によれば、これは均質な二重曲面としては当時最大規模のもので、専用に開発されたソフトウェアを用いて実現された。声高な造形を避け、「ランドマークではなく記念碑」であろうとする節度が、設計の基調をなす。
意義・現在
POLIN は、ホロコーストの記憶のみに還元されない、千年にわたるポーランド・ユダヤ文化の総体を語ろうとする点に特色がある。記念碑・博物館・公園が一体となって新たな都市空間を形づくり、その建築は国際的に高く評価された。設計者マハラマキは本作により2014年にフィンランド建築賞を受賞し、建物はミース・ファン・デル・ローエ賞のノミネートなど数々の栄誉に浴している。様式の名で括りにくい、現代建築の達成の一例といえる。