EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture

建築様式史 — CHAPTER 17

脱構築と非線形

Deconstructivism & High-tech

ポストモダンが過去の様式を「引用」してみせた次に来たのは、形態の言語そのものを問い直す試みであった。構造や設備をあえて外へさらけ出すハイテック。整然とした秩序を断片化し、ねじり、歪ませる脱構築。そして、コンピュータがひらく、うねる自由曲面。本章では、形が様式の規範から解き放たれていく、20世紀末の建築をたどる。

ハイテック

20世紀末の建築は、形態をあらゆる方向へ解き放っていく。その一つの方向が、ハイテック建築であった。これは、最新の工業技術や構造、設備を、隠すどころか前面に押し出すことを意匠とする。その鮮烈な宣言が、1977年にパリに開館したポンピドゥー・センターである。レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースは、ふつうは壁の内に隠す構造の骨組み、空調のダクト、配管、そしてエスカレーターまでを、すべて建物の外側にさらけ出し、機能ごとに色分けして見せた。設備を外へ追い出した結果、内部には柱も仕切りもない、自由に使える広大な空間が生まれる。この「inside-out(内外の反転)」と呼ばれる発想は、歴史的なパリの街に工場のような建物を出現させ、激しい論争を呼んだ。ロジャースはのちにロンドンのロイズ・ビルで、ノーマン・フォスターは香港上海銀行の本店で、同じく構造と設備を露出する手法を洗練させ、ハイテックを一つの確かな潮流へと育てている。だが、建築を完結した彫刻ではなく、活動を支える柔軟な「装置」とみるその思想は、世界に大きな影響を与えた。

脱構築主義

もう一つの方向は、形そのものの秩序を、あえて壊すことであった。1988年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で、一つの展覧会が開かれる。「脱構築主義建築」と題されたその展示は、フランク・ゲーリー、ザハ・ハディド、レム・コールハースらに加え、ピーター・アイゼンマン、ダニエル・リベスキンド、ベルナール・チュミら、似た志向をもつ建築家たちの作品を集めたものだった。彼らの建築は、直交する箱や安定した構成を拒み、断片化し、傾き、歪み、ぶつかり合う形態を生んだ。ただし、注意しておきたいのは、この脱構築主義が、綱領を共有する統一された「運動」ではなく、似た傾向の建築家を一つの名のもとに束ねた、展覧会由来のラベルだったという点である。実際、ゲーリー自身は「脱構築主義者」を名乗ったことはない。それでも、整然とした近代の秩序を解体しようとするこの志向は、時代の気分を強くとらえた。とりわけザハ・ハディドは、のちに流れるような曲線の建築で、この志向を独自の高みへと押し上げていく。

曲面の解放

脱構築の探求は、やがて、彫刻のように自由な曲面の建築へと結実する。その記念碑が、1997年にスペインのビルバオに開館した、フランク・ゲーリー設計のグッゲンハイム美術館であった。輝くチタンの薄板に覆われた建物は、金属の帆が風にはためくように、うねり、渦を巻く。石灰岩の落ち着いた量塊と、光を受けて表情を変えるチタンの被膜とが、川沿いの街に有機的な彫刻を出現させた。直線も直角もほとんどない、この複雑な自由曲面は、人の手だけでは設計も施工もできなかった。ゲーリーは、もともと航空機の設計に使われた三次元ソフトウェアCATIA(CAD/CAM)を建築に応用し、複雑な曲面を正確な数値データに変換することで、初めてこの形を現実のものとした。そしてこの美術館は、建築の歴史を超えた現象をも引き起こす。衰退した工業都市ビルバオが、この一棟の傑作によって世界的な観光地へと生まれ変わったのである。一つの建築が都市を再生させるこの力は、「ビルバオ効果」と呼ばれ、各地の都市が著名建築家の話題作に再生を託すようになった。

デジタルの予兆

ハイテックも脱構築も、そして自由曲面も、突きつめれば、技術が形態の可能性を押し広げた物語である。とりわけビルバオが示したのは、コンピュータが、それまで不可能だった形を設計し、建てられるようにしたという、決定的な転換であった。設計のデータが、そのまま部材を加工する機械へと送られる——CAD/CAMの登場によって、一つひとつ形の異なる部材を、現実的なコストで作れるようになる。建築は、扱いやすい単純な幾何学の束縛から、ついに解き放たれた。やがてコンピュータは、形を「描く」ための道具から、条件に応じて形を「生成する」道具へと進化していく。こうして形態の自由を手にした建築は、しかし、21世紀に入ると新たな問いに直面する。気候の危機、資源の限界、そして社会的な公正——もはや「何でも建てられる」ことよりも、「何を、なぜ建てるのか」が問われる時代が来るのである。最終章では、その建築の「現在」へと向かう。