ロシア構成主義
ロシア構成主義(Constructivism)は、ロシア革命前後のロシア・ソ連に興った前衛芸術・建築の運動である。1910年代半ば、ウラジーミル・タトリンが素材そのものを組み合わせた立体作品「カウンター・レリーフ」を制作したことに端を発し、1920年代に芸術・デザイン・建築を横断する一大潮流へと展開した。
中心にあるのは、芸術を自律した美の追求から解き放ち、新しい社会を築く技術的・実践的な営みへと結び直そうとする思想である。装飾や歴史的な様式を退け、鉄・ガラス・コンクリートといった近代の素材と、その材料が本来もつ性質(ファクトゥーラ)を造形の出発点に据えた。形態は幾何学的で、構造をそのまま露わにし、機能と運動を重んじる。
建築においては、ヴェスニン兄弟やモイセイ・ギンズブルグらが、集合住宅・労働者クラブ・行政庁舎などにこの理念を具体化した。垂直と水平の明快な構成、ガラス面の大胆な使用、機能を率直に表す立面が特徴である。実現しなかったタトリンの第三インターナショナル記念塔は、らせんと回転する立体によって運動と理念を凝縮した、この運動の象徴的構想として名高い。グラフィックや舞台美術、印刷物のデザインにも理念は及び、アレクサンドル・ロトチェンコやエル・リシツキーらが大胆な構成の視覚表現を生んだ。
構成主義は1930年代初頭、社会主義リアリズムが公式の様式とされるなかで退潮するが、その明晰な造形言語は国際的なモダニズムへと流れ込み、20世紀の建築とデザインの基礎の一つとなった。