バロック
ルネサンス建築は、15世紀初頭のイタリアに始まり、16世紀を通じてヨーロッパ各地へ広がった建築様式である。中世ゴシックの垂直志向に対し、古代ギリシア・ローマの建築言語を「再生(リナシタ)」させ、明晰な幾何学と人体に基づく比例の調和を理想とした。フィレンツェの建築家フィリッポ・ブルネレスキが古典の研究と遠近法の探究を通じて口火を切り、レオン・バッティスタ・アルベルティが理論的に体系化したことで、建築は職人の手仕事から知的な作為へと位置づけを変えた。
形態の特徴は、半円アーチ、円柱と古典オーダー(ドーリア・イオニア・コリント)、水平の軒蛇腹(コーニス)による階層の明確な分節、そして正方形や円といった単純な図形の反復にある。ファサードは左右対称を旨とし、各部は全体に対する整数比で関係づけられた。ドームは様式の到達点を示す要素であり、ブルネレスキによるフィレンツェ大聖堂のクーポラや、ローマのサン・ピエトロ大聖堂の構想にその技術的・象徴的な頂点を見ることができる。16世紀にはアンドレーア・パッラーディオがヴィラと『建築四書』を通じて規範を整理し、その影響はイギリスやアメリカのちの古典主義建築にまで及んだ。
イタリア各地に広まる過程で、ローマの重厚な様式やヴェネツィアの装飾的傾向など地域差を生み、スペインやフランスでは在地の伝統と接合した独自の展開を見せた。様式史上は、中世ゴシックを受けて古典を回復し、やがてその規範を動的に「破る」マニエリスムとバロックへと展開していく、近世ヨーロッパ建築の起点に位置づけられる。