マラガ大聖堂 Cathedral Basilica of the Virgin of Incarnation
スペイン南部マラガの大聖堂。ディエゴ・デ・シロエの案により1528年に着工されたルネサンス建築で、資金難で南塔を欠くため「ラ・マンキータ(片腕の貴婦人)」と呼ばれる。
§1 — 概要概要
マラガ大聖堂(正式にはインカルナシオン=受肉の聖母大聖堂)は、スペイン南部アンダルシア州マラガの旧市街に建つカトリックの大聖堂である。レコンキスタ後のマラガを象徴する建築で、ルネサンス様式を基調としながら、長い工期のために複数の様式が同居する。南塔を永遠に欠くことから「ラ・マンキータ(La Manquita=片腕の貴婦人)」の愛称で親しまれている。
歴史
大聖堂は、かつてのモスク跡地に1528年に着工された。設計案を引いたのは、スペイン・ルネサンスを代表する建築家ディエゴ・デ・シロエである。しかし工事は資金難でたびたび中断し、完成を見ないまま250年余りにわたって続けられた。最終的に1782年、建設は南塔を未完のまま打ち切られた。北塔は84メートルに達し、セビーリャのヒラルダに次いでアンダルシアで二番目に高い大聖堂の塔となったが、南塔は基部のみで止まったままである。
南塔が未完となった理由については、港湾税として集めた資金が、アメリカ独立戦争を戦う植民地側の援助に回されたとする言い伝えが残り、塔の基部にもその旨を記した銘板がある。ただし教区の記録からは、資金がむしろ周辺の道路整備などに転用された可能性も指摘されており、伝承の真偽は定まっていない。
建築的特徴
平面は、幅の広い身廊と二つの側廊からなる三廊式で、側廊も身廊とほぼ等しい高さをもつ。内部はルネサンスの古典オーダーと半円アーチによる明晰な構成で、均衡のとれた空間がつくられている。一方、正面のファサードは18世紀のバロック様式で、二層に分かれ、下層には三つのアーチと大理石の円柱による門口が並ぶ。長い工期を反映して、ルネサンスの本体にバロックの正面が接ぎ木された姿となっており、様式の重なりそのものがこの建物の見どころである。内部には18世紀の対をなすパイプオルガンや、ゴシックから新古典主義に至る各時代の祭壇・美術が収められている。
意義・現在
マラガ大聖堂は、ルネサンスの理念をアンダルシアに根づかせたシロエの構想を伝えると同時に、完成しなかったことによってかえって人々に記憶される建築である。「片腕の貴婦人」という呼び名は、未完を欠点ではなく愛着の対象へと転じさせた。スペインの文化財(Bien de Interés Cultural)に指定され、現在もマラガの宗教・観光の中心として機能している。