グラナダ大聖堂 S.A.I. Catedral Metropolitana de la Encarnación
スペイン南部アンダルシアのグラナダに建つ大聖堂。レコンキスタ完了後の1518年、市の大モスクの跡地に着工され、ディエゴ・デ・シロエの設計によってスペイン・ルネサンス建築の代表作となった。正面はアロンソ・カーノによるバロックの傑作である。
§1 — 概要概要
グラナダ大聖堂(正式名称はスペイン語でグラナダ受肉司教座大聖堂)は、スペイン南部アンダルシア州の都市グラナダに建つローマ・カトリックの大聖堂である。グラナダ大司教区の司教座が置かれる。アンダルシアの多くの大聖堂と同じく、レコンキスタ(国土回復運動)の完了後に、市の中心にあった大モスクの跡地の上へ建てられた。スペイン・ルネサンス建築を代表する作品として知られる。
歴史
1492年にナスル朝グラナダ王国が陥落して以後、市のキリスト教化が進められ、大聖堂の建設は1518年に始まった。最初の基礎を据えたのは建築家エンリケ・エガスで、その当初案はゴシック様式に倣うものだった。しかし1520年代の末にはディエゴ・デ・シロエが工事を引き継ぎ、計画は当時スペインに広まりつつあったルネサンス様式へと大きく方向を転じる。シロエは40年近くにわたって基礎から軒先まで建物の骨格をつくりあげ、五廊式の身廊と半円形の内陣を組み合わせた独自の構成を打ち立てた。その後も工事は長く続き、17世紀には画家・彫刻家でもあったアロンソ・カーノが正面のファサードを設計した。大聖堂が一応の完成をみたのは1704年で、着工から実に2世紀近い歳月を要したことになる。当初は二基を予定した正面の塔も、最終的に一基のみが建てられた。
建築的特徴
本体の意匠は、シロエが導いたルネサンスの明晰な秩序に貫かれている。林立する太い柱が高い身廊を支え、付柱(ピラスター)やオーダーによって壁面が古典的な律動で整えられる。とりわけ内陣は、円形の集中的な空間を主軸の身廊へ接続するという独創的な解決で知られ、白を基調とした内部に光が満ちる。一方、アロンソ・カーノが手がけた正面は趣を異にし、三つの大きな凹面の弧を重ねた壁面が深い陰影を生む、力強いファサードである。静的な比例を旨とするルネサンスの本体に、運動感あふれるバロックの感覚が接ぎ木されており、二つの時代の様式が一棟のうちに同居している。
意義・現在
グラナダ大聖堂は、イスラーム支配の終焉とキリスト教世界の到来という、スペイン史の大きな転換を石で語る建築である。モスクの跡地に据えられたという事実そのものが、その象徴性を物語る。建築的には、ディエゴ・デ・シロエがスペインにルネサンスの語法を本格的に根づかせた記念碑であり、後続の大聖堂に強い影響を残した。隣接する王室礼拝堂にはカトリック両王の墓所があり、今日も信仰と歴史の中心として、グラナダを訪れる人々を迎えている。