スーダノ・サヘル様式
スーダノ・サヘル様式(Sudano-Sahelian architecture)は、サハラ砂漠の南縁、西アフリカのサヘル地域に広がる、日干し煉瓦(バンコ)を主材とする建築の総称である。トンブクトゥ、ジェンネ、ガオなど、サハラ交易で栄えた都市を中心に発達した。
最大の特徴は、土という素材から生まれる、ふくよかで彫塑的な造形にある。壁は厚く、上へすぼまり、屋上には角錐状の小尖塔が林立する。壁面からは、ヤシの木の梁(トロン)が無数に突き出す。これは装飾であると同時に、毎年の補修の際に職人が登る足場となり、土の建築を維持する仕組みそのものでもある。
日干し煉瓦は雨に弱く、絶えず塗り直さねばならない。それゆえこの建築は、共同体による定期的な塗り替えを前提とする。ジェンネの大モスクでは、毎年、町の人々が総出で泥を塗り重ねる祭りが営まれ、建物は更新され続けてきた。石材にも長い木材にも乏しいサヘルでは、足元の土こそが最も豊かな建材であった。モスクだけでなく、宮殿や邸宅、穀倉までもが同じ手法で築かれ、ジェンネには塗り壁を専門とする職人の組合が、代々その技を伝えてきた。
イスラームの礼拝施設としての機能と、サヘルの風土・素材・職能が結びついて生まれたこの様式は、世界最大級の日干し煉瓦建築を実現した。ジェンネの旧市街は、この大モスクとともに世界遺産に登録されている。土が記念碑となりうることを、雄弁に物語る様式である。
西アフリカ・マリの古都ジェンネに立つ、世界最大の日干し煉瓦造の建築。泥(バン…