ジェンネの大モスク Great Mosque of Djenné
西アフリカ・マリの古都ジェンネに立つ、世界最大の日干し煉瓦造の建築。泥(バンコ)によるスーダン=サヘル様式の到達点で、壁から突き出す木材トロンと三本の塔が独特の輪郭をなす。毎年塗り直される「生きた建築」。
§1 — 概要概要
ジェンネの大モスクは、西アフリカ・マリ共和国の古都ジェンネ、バニ川の氾濫原に立つ、世界最大の日干し煉瓦造の建築である。泥(バンコ)を素材とするスーダン=サヘル様式の到達点とされ、壁面から無数に突き出す木の棒「トロン」と、卵形の頂飾りをもつ三本の塔が、独特の輪郭をつくる。地域の信仰と共同体の中心であり、アフリカで最も名高い建築の一つである。
歴史
この地に最初のモスクが築かれたのは13世紀ごろ、ジェンネ最初のイスラーム教徒の王が、その宮殿をモスクに改めたと伝わる。ジェンネは交易と学問の都として栄え、モスクはサハラ以南有数のイスラーム学問の中心となった。原型のモスクはやがて荒廃したが、1906〜07年、ジェンネの石工組合の長イスマイラ・トラオレの指揮のもと、現在の建物が伝統の技法で再建された。1988年、「ジェンネ旧市街」の構成資産としてユネスコ世界遺産に登録されている。
建築的特徴
壁は、泥に籾殻を混ぜて日に干した煉瓦(フェレイ)を泥のモルタルで積み、表面を泥の漆喰で塗り込めて、彫塑のような滑らかな肌をつくる。東を向く礼拝の壁(キブラ)には三本の塔がそびえ、多数の控え壁が立面を引き締める。壁から突き出すトロンは、装飾であると同時に、毎年の塗り直しのための足場ともなる。雨季の浸食で傷む壁を、共同体が総出で塗り直す「クレピサージュ」と呼ばれる祭りが、この建築を生かし続けている。
意義・現在
ジェンネの大モスクは、土という素朴な素材を用いて、地域の気候と信仰に応えてきた西アフリカの建築知の結晶である。完成した瞬間に固定される石や焼成煉瓦の建築と異なり、毎年塗り直されることで保たれる「生きた建築」である点に、その本質がある。今日も金曜の集団礼拝の場として人々を集め、サヘルの大地に泥の塔をそびえさせている。