バクーの海沿いに建つアゼルバイジャン国立絨毯博物館。巻かれた絨毯をかたどった曲面の建物で、オーストリアの建築家フランツ・ヤンツの設計により2014年に開館した、絨毯織を主題とする現代建築の作例である。
§1 — 概要概要
アゼルバイジャン国立絨毯博物館は、カスピ海に面したバクーの海岸公園(国立海浜公園)に建つ文化施設である。巻かれた一枚の絨毯をそのままかたどったような曲面の外形で知られ、世界最大規模のアゼルバイジャン絨毯のコレクションを収める。収蔵の主題である絨毯織を建物の形態そのものへ翻案した点で、近年のバクーを象徴する現代建築の一つに数えられる。
歴史
博物館の起源は、絨毯職人ラティフ・カリモフの提唱により1967年に設立された機関にさかのぼる。当初は旧市街(イチェリ・シェヘル)のジュマ・モスクに置かれ、1972年に最初の展示が行われた。ソ連崩壊後の1992年には、旧レーニン博物館の建物へ移っている。現在の独立した建物は、ヘイダル・アリエフ財団とユネスコの関与のもとで計画され、2008年5月に定礎、約6年の工期を経て2014年8月に開館した。設計はオーストリアの建築家フランツ・ヤンツによる(同郷のヴァルター・マリとの協働とも伝えられる)。アゼルバイジャンの絨毯織は2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されており、新館の建設はこの評価と軌を一にするものであった。
建築的特徴
建物の最大の特色は、床面から立ち上がって大きく巻き上がる、絨毯を丸めた形を想起させる外形にある。湾曲した壁面が展示空間を包み込み、内部は複数の階層に分かれて、地階の公共空間から上階の展示室へと順路が立ち上がる。外構には大理石が用いられ、隣接する公園とを結ぶ歩廊が設けられている。形態がそのまま収蔵品の主題を語るという「語る建築」の発想に立つ点が、機能本位の博物館建築のなかでも際立っている。
意義・現在
館は1階に平織やフェルトなど多様な工芸を、2階に地域別のパイル絨毯を、3階に近現代の作品と館の歩みを配し、アゼルバイジャン各地の絨毯織の体系を通覧できる構成をとる。フレイム・タワーズや、ザハ・ハディド設計のヘイダル・アリエフ・センターと並んで、21世紀のバクーが推し進めた現代建築群の一翼を担い、観光と文化の拠点として機能している。
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