モスクワ地下鉄カルーシュスカヤ・リシュスカヤ線の駅。1978年開業。科学アカデミーの植物園にちなんで名づけられた、白大理石とアルミニウム装飾による柱式の浅い駅である。
§1 — 概要概要
植物園駅(ロシア語:Ботанический сад)は、モスクワ北東部のロストキノ地区に位置するモスクワ地下鉄の駅である。カルーシュスカヤ・リシュスカヤ線(オレンジ線)に属し、ヴェー・デー・エヌ・ハー駅とスヴィブロヴォ駅の間に置かれる。駅名はモスクワ科学アカデミーの主植物園に由来するが、植物園そのものは隣のヴラディキノ駅側にあり、当駅からは徒歩10〜15分を要するため、名称はやや紛らわしいものとなっている。
歴史
植物園駅は1978年9月29日、リシュスキー放射線の北西への延伸とともに開業した。設計はニコライ・デムチンスキーとユリヤ・コレスニコワが担当している。当駅はモスクワの環状鉄道(小環状線)の真下に位置することから、開業当初より将来の乗換結節点となることが想定されていた。実際、2016年には地上の環状鉄道がモスクワ中央環状線(MCC)として旅客化され、近接して同名の駅が設けられている。周辺はもともと人口の希薄な地域で、一日あたりの乗降客数は地下鉄駅としては少ない部類に入る。
建築的特徴
構造は、2列の柱が天井を支える浅い「柱式(3スパン)」の駅である。天井はモジュール化された陽極酸化アルミニウム製の照明ユニットを格子状に並べて覆い、均質で明るい光を床に落とす。柱と壁面は白い大理石で仕上げられ、壁には自然をテーマとしたアルミニウムの装飾レリーフ(美術家ヴェトロワ〈Z. Vetrova〉による)が配されている。出入口は二つあり、南側はレオノヴァ通りに面した地上のロタンダ(円形建屋)で、彫刻的なランプ(マステルプロ〈N. Masterpulo〉の作)によって内部が照らされ、エスカレーターでホームに通じる。北側は小環状鉄道を挟んだ反対側の地下出入口で、周辺街路の地下道と接続する。スターリン期の豪奢な装飾とは異なり、簡素な素材と幾何学的な照明で空間をまとめる、1970年代モスクワ地下鉄の様式をよく示している。
意義・現在
植物園駅は、戦後ソ連の地下鉄建設が、初期の宮殿的な意匠から、規格化された部材と簡潔な装飾による効率的な空間へと移行していく過程を体現する駅である。白大理石とアルミニウムという限られた素材の組み合わせのなかに、自然を主題とするレリーフという控えめな芸術性を織り込んでいる点に、当時のモスクワ地下鉄が保ち続けた装飾への意識がうかがえる。環状鉄道の旅客化によって乗換駅としての性格を強めつつ、現在も現役の駅として日々利用されている。