モスクワ・メトロの駅。1969年開業。装飾を抑えた規格設計「百足型」を採用し、高度成長期の合理的な駅づくりを示す。二つの路線が交わる乗換駅。
§1 — 概要概要
カシールスカヤ駅は、ロシアの首都モスクワの地下鉄(モスクワ・メトロ)の駅である。1969年に開業し、市内南部、モスクワ川の近くに位置し、ザモスクヴォレツカヤ線とカホフスカヤ線が接続する結節点の役割を担ってきた。駅名は、モスクワと古都カシーラを結ぶカシーラ街道にちなむ。
歴史
カシールスカヤ駅は1969年8月11日、ザモスクヴォレツカヤ線の南方延伸にともなって開業した。設計はニコライ・デムチンスキーとユリヤ・コレスニコワが手がけた。開業当初から二面の島式ホームをもつ構造として計画され、のちにここからカホフスカヤ線が分岐する乗換駅として機能するようになった。装飾を競った初期のモスクワ・メトロとは異なり、1960年代の合理化方針のもとで建設された駅である。
建築的特徴
カシールスカヤ駅は、柱で天井を支える「百足(むかで)型」と呼ばれる標準設計を採用した駅の一つである。これは1960年代のソ連で、建設の合理化とコスト削減のために大量に用いられた規格的な構造で、二列に並ぶ細い角柱がプラットフォームの天井を支え、その整然と林立する様子から「百足」の名で呼ばれるようになった。同型の駅はモスクワをはじめソ連各地に数多く建設され、短い工期と低い費用で大量の乗客をさばくことを目的としていた。装飾は抑制され、初期のモスクワ・メトロに見られた宮殿のような華やかさよりも、機能性と経済性が前面に出ている。壁面のタイルや柱の仕上げには、簡素ながら統一感のある意匠が施され、明るく見通しのよい空間がつくられている。
意義・現在
華麗な装飾で名高い初期のモスクワ・メトロに対し、カシールスカヤ駅は高度成長期の合理主義的な駅づくりを示す事例である。今日も二つの路線が交わる乗換駅として多くの乗客に利用されており、華美さを排した規格設計の駅として、モスクワの巨大な都市交通網を支える実用的な施設であり続けている。