聖アンナ教会 Church of St. Anne, Vilnius
リトアニアの首都ヴィルニュス旧市街に建つ、ブリック・ゴシックの教会。1495〜1500年に33種の煉瓦を用いて築かれた華麗な正面で知られ、ナポレオンが「手のひらに載せて持ち帰りたい」と語ったという逸話で名高い。
§1 — 概要概要
聖アンナ教会(Šv. Onos bažnyčia)は、リトアニアの首都ヴィルニュスの旧市街、ヴィルニア川のほとりに建つカトリック教会である。1495年から1500年にかけて築かれた煉瓦造のゴシック建築で、フランボワイヤン・ゴシックとブリック・ゴシックを代表する一例として知られる。33種もの形の煉瓦を組み合わせた華麗な正面は、リトアニアでもっとも美しいゴシックの作例の一つに数えられ、ヴィルニュス旧市街が世界遺産に登録される後押しともなった。
歴史
この場所には、もともとヴィタウタス大公の妃アンナのために建てられた木造の教会があったが、1419年の火災で失われた。現在の煉瓦造の聖堂は、ポーランド王にしてリトアニア大公であったアレクサンデル1世の発意により、1495年から1500年にかけて建てられ、1500年に献堂された。正面の外観は、その後ほとんど変わることなく今日まで伝わっている。設計者については、ワルシャワの同名の教会を手がけたミハイル・エンキンガー、あるいは後期ゴシックの名匠ベネディクト・リートの名が挙げられるが、いずれも文献的な裏づけを欠き、確定していない。1582年の火災ののちにはラジヴィウ家の支援で修復され、内部はのちにバロック様式で整えられた。
建築的特徴
単廊式の身廊に二つの尖塔を伴う、比較的小さな建築である。最大の見どころは、その正面(ファサード)にある。尖頭アーチや火炎を思わせる曲線(フランボワイヤン)といったゴシックの語彙が、矩形の枠と組み合わされて左右対称に構成され、垂直線と曲線が律動的に響き合う。壁面には重い石積みを置かず、付け柱や細い柱、アーチと優美な小塔だけで軽やかにまとめられている。これらをすべて成形煉瓦で築いた点に、この教会の独自性がある。赤く焼かれた33種の煉瓦が、繊細で複雑な装飾を生み出している。なお内部は、外観の華麗さに比べて簡素で、祭壇などはバロック様式である。
意義・現在
聖アンナ教会は、煉瓦という素材でフランボワイヤン・ゴシックを実現した稀有な建築であり、世界にも類を見ない。1812年、ヴィルニュスを訪れたナポレオンがその美しさに見とれ、「手のひらに載せてパリへ持ち帰りたい」と語ったという逸話は広く知られる。隣接するベルナルディン会の聖フランチェスコ・聖ベルナルド教会や修道院とともに建築群をなし、1994年に世界遺産に登録されたヴィルニュス歴史地区の中心的な景観の一つとなっている。すぐ近くには、1870年代に新ゴシック様式で建てられた鐘楼が立つ。
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