フランクフルトの金融街に建つ、高さ259メートルのドイツ最高層ビル。ノーマン・フォスターの設計で1997年に竣工し、空中庭園と自然換気を備えた「世界初のエコロジカル超高層」として知られる。
§1 — 概要概要
コメルツ銀行タワー(Commerzbank Tower)は、ドイツのフランクフルト・アム・マインの金融街に建つ超高層ビルである。屋上までの高さは259メートル、頂部のアンテナ尖塔を含めると300.1メートルに達し、ドイツで最も高い建築物として知られる。コメルツ銀行の本店として、ノーマン・フォスター率いるフォスター・アンド・パートナーズの設計により1997年に完成した。自然採光と自然換気、そして塔を螺旋状に巡るスカイガーデンを備え、しばしば「世界初のエコロジカル(環境共生型)超高層ビル」と評される。
歴史
計画は1990年代初頭、緑の党が市政に加わっていたフランクフルトにおいて、環境に配慮した「緑の超高層」を求める機運のなかで具体化した。国際指名コンペを経てフォスターの案が採用され、1994年に着工、1997年に開業した。完成時には259メートルでヨーロッパ最高層となり(2003年まで保持)、ドイツ最高層の地位は今日まで揺らいでいない。開業日には『フィナンシャル・タイムズ』紙がこのビルをフランクフルトの象徴として扱い、ロンドンのビッグ・ベンやパリのエッフェル塔になぞらえた。この設計はフォスターが1999年にプリツカー賞を受賞する一因ともなった。
建築的特徴
平面は一辺約60メートルの丸みを帯びた正三角形で、三つの「花弁」にあたる執務フロアと、中心を貫く全高のアトリウムという「茎」から構成される。三角形の各辺には数層おきに四層吹き抜けのスカイガーデンが配され、塔を螺旋状に上昇する。庭園は北米・アジア・地中海の三つの地域の植栽で彩られ、執務空間に光と新鮮な空気を導くとともに、社交と憩いの「垂直の村」を形づくる。外周は開閉可能な窓をもつダブルスキン・ファサードで覆われ、年間の約85パーセントを自然換気でまかなうことを可能にした。その結果、消費エネルギーは在来型の高層オフィスの約半分に抑えられている。庭園に柱を立てないため、構造は鉄筋コンクリートではなく鋼を主体とし、隅角部のヴィーレンディール・トラスが大きな床版を支える。
意義・現在
コメルツ銀行タワーは、深い平面と全館空調を前提とするアメリカ型のオフィス塔に対し、自然光と通風、緑を組み込んだ新しい高層建築の類型を提示した点で画期的であった。環境性能を意匠と構造の中心に据えたハイテック建築の到達点の一つであり、後続の環境配慮型超高層に大きな影響を与えた。現在もコメルツ銀行の本店として使われ、フランクフルトのスカイラインを象徴する存在であり続けている。