クレイヴン・コテージ Craven Cottage
ロンドン西部、テムズ河畔のフラムにあるサッカー専用スタジアム。1896年からフラムFCの本拠地で、1905年にアーチボルド・リーチが設計した赤煉瓦のスタンドと、「コテージ」と呼ばれる小亭が、英国のスタジアム建築の古典として知られる。
§1 — 概要概要
クレイヴン・コテージは、ロンドン西部のフラム、テムズ川のほとりに建つサッカー専用スタジアムである。1896年以来フラムFCの本拠地でありつづけ、英国に現存するサッカー場のなかでも、もっとも古い時代の面影をとどめる一つに数えられる。リーチが手がけた赤煉瓦のスタンドと、ピッチ脇に建つ「コテージ」と呼ばれる小亭が、独特の親密な雰囲気を生んでいる。
歴史
地名は、1780年にクレイヴン男爵が建てた狩猟用の別荘「コテージ」に由来する。この建物は1888年に火災で焼失し、跡地はしばらく放置された。1894年にフラムFCがこの土地を見いだし、二年がかりで整地して、1896年に初の公式戦が行われた。1905年、安全性をめぐる訴訟を機に、グラスゴーのアイブロックス・スタジアムで名を上げた建築家アーチボルド・リーチが招かれ、約1万5千ポンドを投じてスタンドと小亭を建設した。これらが現在まで受け継がれている。
建築的特徴
リーチの設計は、彼が各地のサッカー場で確立した赤煉瓦の様式によっている。スティーヴニッジ・ロードに面したスタンドは、煉瓦造の正面に控えめな装飾を施した、堅実なエドワード朝の意匠をもつ。観客席は鉄骨と木材で組まれ、屋根の妻面にクラブにちなむ意匠を掲げる構成は、リーチ作品に共通する特徴である。ピッチの一隅に建つ小亭「コテージ」は、選手の控室や貴賓席を兼ねた小さな建物で、スタジアムの象徴となっている。
意義・現在
クレイヴン・コテージは、20世紀初頭の英国サッカー場の姿を今に伝える貴重な存在である。リーチが設計したスタンドと小亭は、その建築的・歴史的価値からグレードII指定建築物に登録されている。改修や再開発の議論を経ながらも、河畔の景観と古典的なスタンドは守られ、近代的な大型スタジアムとは異なる、町なかの小さな競技場ならではの魅力を保ちつづけている。