ドンバス・アリーナ Donbass Arena
ウクライナ東部ドネツィクに2009年開場したサッカー専用スタジアム。アラップが設計し、空飛ぶ円盤を思わせる大屋根で知られたが、2014年以降は紛争により閉鎖が続く。
§1 — 概要概要
ドンバス・アリーナは、ウクライナ東部ドネツィクの中心部に建つサッカー専用スタジアムである。2009年に開場し、収容人数は約55,000人。地元のシャフタール・ドネツィクの本拠地として用いられ、2012年の欧州選手権(UEFA EURO 2012)の会場の一つともなった。建設費は約4億ドルに上り、旧ソ連圏でも有数の規模と設備を備えた競技場として知られた。
歴史
建設は2006年に始まり、トルコの建設会社ENKAを主契約者として約1,600人の技術者が携わった。設計はイギリスの設計事務所アラップのスポーツ部門(ArupSport)が手がけ、同部門はミュンヘンのアリアンツ・アレーナや北京国家体育場なども設計している。2009年8月に開場したが、2014年に始まったドンバス地域の武力衝突により同年5月以降は一般利用が停止され、以後は無期限の閉鎖状態が続いている。
建築的特徴
楕円形の平面に、滑らかに反り上がる大屋根を架けた姿は、しばしば空飛ぶ円盤にたとえられる。外周をガラスのカーテンウォールで覆い、夜間は照明で建物全体が発光する。屋根は北から南へと緩やかに傾斜し、周囲の地形になじむと同時に、ピッチへの採光と通風を確保する。中心部の地下深くには地質断層が走っており、基礎と杭の工事は計画上の大きな課題となった。建設にあたっては、敷地の樹木をできるだけ残す配慮もなされた。
意義・現在
開場当時、ドンバス・アリーナは東欧における最新鋭のスタジアム建築として高く評価された。一方で、稼働からわずか5年で紛争により閉ざされたその経緯は、建築が置かれた地域の情勢と不可分であることを示している。現在も建物自体は残るが、本来の用途には供されていない。