香港上海銀行・香港本店ビル HSBC Main Building
ノーマン・フォスターの設計により1985年に竣工した銀行本店ビル。巨大なマストとトラスに床を吊るハイテックの到達点であり、地上階を都市に開放する。
§1 — 概要概要
香港上海銀行・香港本店ビル(HSBC Main Building)は、香港・中環のスタチュー・スクエアに面して建つ高さ約179mの本店ビルである。ノーマン・フォスターの設計により1985年に竣工した。構造と設備を徹底して外部化・部品化したハイテック建築の代表作であり、ポンピドゥー・センターと並ぶこの潮流の到達点とされる。
歴史
同地は1865年の銀行創業以来の本店所在地であり、現在の建物は同じ敷地に建った4代目にあたる。1935年竣工の先代本店を解体して建設された。設計はフォスター・アソシエイツ、構造はオーヴ・アラップが担い、部材は世界各地で製作されて現場で組み上げられた。竣工後も香港の金融街の中心であり続け、隣接して建った中国銀行タワーとともに中環のスカイラインを規定している。
建築的特徴
8本の組マストを数層分ごとの巨大な吊りトラスで連結し、そこから各階の床を吊る——柱で積み上げるのではなく「吊り構造を積層した」ビルである。これにより内部は大スパンの無柱空間となり、コアや階段・設備は外周へ追い出され、モジュール化されて将来の交換を前提に露出する。地上階は壁のない吹き放ちの広場として都市に開放され、エスカレーターだけが銀行内部へ貫入する。中央のアトリウムには、可動の鏡により自然光が導き込まれる。
意義・現在
構造・設備・施工の論理をそのまま建築の表現とする姿勢は、ハイテックの理念の最も純度の高い実現とされる。地上を公共に明け渡す断面構成は高密度都市の高層建築にひとつの範型を示し、休日には吹き放ちの広場が市民の憩いの場となる光景が香港の風物となっている。建物は現在も香港上海銀行の本店として使われている。